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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
*
「……で、譲っ」
「見たいわ!見せて!!」
「え」
話を結ぶ前に詰め寄られ、ビスカスは固まりました。
そんな硬直したビスカスを物ともせずに、ローゼルは畳み掛けました。
「譲って頂いたんでしょう?それがお土産で、贈り物なのよね?!」
「はあ、ま」
「見せて頂戴」
「や、」
「持って来なかったの?館に置いて来たの?」
「い」
「じゃあ、早く出して」
「で」
「お出し、ビスカス。」
「……へえ……」
こんな風に脅されて渡す予定では、無かったのですが。
ローゼルに逆らう事など、出来る訳が有りません。
ビスカスは寝台からそろりと降りると、脱ぎ捨ててある服をごそごそ探りました。しばらくかかって石を探し出すと、こそこそ寝台に戻りました。そして、少し離れた所から、ローゼルの方に手を伸ばしました。
「……こいつでさあ」
「まあっ……!!」
ローゼルは差し出された手を両手で握り、かじかんだ指に口づけました。それからビスカスに近付いて冷えた体にぴったり身を寄せると、握っている手を開かせました。
すると。
肉厚で武骨な掌の上に、薔薇を閉じ込めた小さなしずくが現れました。
「……素敵!朝露みたい……!」
「……へえ……」
ビスカスの手を取ったまま、ローゼルはうっとり呟きました。それなのに、何故かビスカスは浮かない顔をしています。
「これ、薔薇ね?」
「へい。薔薇です」
「……とっても、綺麗……」
細い指でしずくを摘まみ上げ、光に透かして眺めながら、ローゼルはほうっと感嘆の溜め息を吐きました。そんなローゼルを見ずに、ビスカスはぼそぼそと呟きました。
「薔薇見たら、リュリュを思い出すじゃねーですか。そりゃあ、どーしよーもねーじゃねーですか。鼠見たら追っ掛ける猫みてーなもんじゃねーですか。その上スグリ様がいっつも指輪なさってんのなんかも思い出したりなんかしちまってですね……でもリュリュはもうすげーもん一杯お持ちでしょうから、こんなん一つくらい増えた所でどうって事ねーかなっても思ったんですけど、見せてえなーって思っちまって、つい、譲って下せえ!って……でも、」
ビスカスは一旦言葉を切って、もじもじと次の言葉を躊躇いました。
「……お持ちですよね?もっと、デカい薔薇。」
相変わらずローゼルの方を見ずに、ビスカスはおずおずと聞きました。