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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
「え?」
ビスカスが呟き続けている間もじっと水晶を眺め続けていたローゼルは、尋ねられて、はっとしました。
「……どうして、知ってるの……?」
ローゼルは、同じ様に裏彫りが施された母の形見をビスカスが知っている事に、驚きました。
ローゼルはまだ、それを身に着けたことは有りません。
母が身に着けていた頃には、ビスカスはまだ宴席の仕事が出来る年では有りませんでした。男子なので、装飾品を外す着替えの際に同席した事も無い筈です。それ以外に薔薇の飾りを目にする機会など、有るとは考えられません。
何故、ビスカスが知っているのでしょう。
「……やっぱりですかー……」
驚くローゼルを見たビスカスは、はーっと溜め息を吐きました。
「譲って貰った後に、リアン様に聞いて知ったんでさあ。百合の水晶が、麗氷の御印だって。それで、あれっと思って、マリア様にもお尋ねしたんです」
ビスカスはローゼルを緩く抱き寄せて、頭の上で話し続けました。
「……百合の水晶が有るんなら、鈴蘭の水晶も有んですか?って。そしたら、ええ、って仰って……本当はそのあと、薔薇も有んのか聞くつもりだったんですけど、別の話に変わっちまって、詳しい事ぁ聞き損ねて……結局そん時にゃあ、薔薇も有るかは、分かんなかったんです」
そう言うと、抱き寄せた腕を緩めて目と目を合わせて、おでこをこつんと合わせました。
「……でも、やっぱり、お持ちでしたねー……」
ビスカスはローゼルの額にそっと唇で触れ、すぐ離れるとまた頭の上で呟きました。
「すいやせん。ちゃんと立派なのをお持ちなんですから、珍しくもなんともねーですよね……なのに、こいつを見た時すげーびっくりしたもんで、リュリュにも見せてぇって思っちまって、挙げ句の果てに、こんなちっこい石を差し上げちまって……」
抱き寄せていた腕を少し緩めたビスカスは、黙り込んで聞いているローゼルの手から薔薇の水晶を摘み取って、小さな薔薇を眺めました。