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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
「えーっと……」
ローゼルは、まず、ローゼルです。
二人だけで居るときは「リュリュ」です。
誰より愛する気高く可愛い女です。
領主家のお嬢様です。
どんな事が起ころうが一生仕えると決めた主です。
絶世の佳人、この地に知らぬ者の無い「水晶の薔薇」です。
やっと正式な婚礼が出来る事になった、自分には勿体ない妻です。
そんな事を考えながら、ぼそぼそと並べ立てていたら、ローゼルにむにっと頬っぺたを摘ままれました。
「それ、頭の中で、その順番になってるでしょう?」
「ふへ?」
ローゼルは摘まんだ頬っぺたを、ふにゅっと優しく引っ張りました。
「あなたがまだ見たことがない『デカい薔薇』は、私のじゃないのよ」
「……ふえ?」
「あれは、お母様がお嫁に来るときに、ご実家からお持ちになった物よ。リアンは、『御印』って言ったのでしょう?」
「ふえ」
「あれは、私の物ではなくて、『薔薇の御印』よ。私はーーお母様が亡くなったから、持ってるけど」
「……へい」
頬っぺたから手を離して俯いてしまったローゼルを、ビスカスは抱き寄せました。
ローゼルはビスカスに体を擦り寄せて、ふうっと大きく深呼吸しました。
「……本来は、結婚したら渡される物なの。もともと、『麗氷の薔薇』を継いだ者がーー今では『水晶の薔薇』を継いだ者が、公の場で身を飾る物よ……他の装飾品も、家に伝わる物ばかりだわ」
そう言うとローゼルはビスカスの胸に手を着いて軽く押し、少し距離を取りました。