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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
「リュリュ……」
急に身を離されて二人の間に開いた隙間に、ビスカスは戸惑いました。ローゼルは水晶が握られている手を取ると、その手をやんわり開かせました。
「ビスカス。あなたはこれを、誰に渡そうとしているの?」
ローゼルはビスカスの目を見詰めました。
「あなたの主?お嬢様?それとも、『水晶の薔薇』?」
「そりゃ……」
「私は、あなたの何?」
目を逸らすことを許されない真剣な光に満ちた瞳を見ていたビスカスの口から、勝手に言葉が零れ落ちました。
「……俺の……女です……」
(……そうだ。みんなの、なんかじゃねえ)
「俺のです。他の奴にゃあ見せたくねぇです。触る奴ぁ八つ裂きにしてぇです。俺が誰より最初に見つけて、大事に守って見続けて来た、俺だけの薔薇です。誰にも近寄らせたくなんか有りやせん」
『……獣がどういう時に噛んだり、匂いを付けたりするか、知っていて?』
(俺ぁあの時、傷付けたかった訳じゃねえ。俺が持ってたなぁ、もっと大それた望みだ。これは、俺のだ。俺だけのだ。その印を、付けたかったんだ)
「俺のにーー俺だけのものに、なって下せえ。たとえ水晶の薔薇であってもお嬢様であっても、女領主様になっても奥様になっても、どんなに他の奴等に敬われようが崇拝されようが愛されようが、あんたぁ俺だけの女です」
黙って聞いていたローゼルは、ビスカスの掌の上に、自分の手を重ねました。
そして、薔薇の雫ごと両手で握り締めると、そこに唇を寄せました。