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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第2章 仕方のない問題
 少しの間沈黙が流れ、やがて領主様が溜め息と共に口を開きました。

「ビスカス。顔を上げなさい」
「はい」
「お前達を責めたり、咎めたりする積もりは無い。私達は既に、お前達が初床を迎えた事を認めているからだ」
「……へ?」
「貴方っ?!何を仰ってるの?!」
「……お前には黙っていたが、母と私とタンムは、昨日この二人がここで何をしていたか、知っていたのだよ」
「何ですって!?」
「え?」
「へっ?!」

 領主様の言葉は、奥方様だけでなくローゼルとビスカスにとっても、晴天の霹靂でした。

「昨日、お祖母様の話が一段落した所で、お前達を呼びに来たんだけどね?」

 タンム卿は、からかう様な口調で、ビスカスとローゼルに告げました。

「扉を叩いても返事が無いし、部屋に入っても、誰も居ない。仕方なく、寝室との中扉の前まで来てみたら……」

 そこで何故かタンム卿が言葉を切ったので、ビスカスとローゼルはさあっと血の気が引きました。

「……声を掛けたら、かなりお邪魔な様子だったからね。声を掛けずに戻ったんだよ」
「まあっ……」
「うっ……」

 先程の堂々とした宣言は、何処へやら。ビスカスは、卒倒しそうになりました。
 昨日ビスカスが物音だと思ったのは、やはり雨では無くて、物音だったのです。
 ローゼルは血の気が引きかけたあと全身に血が上るという忙しい状態になりましたが、兄が来たらしい時に交わしていた睦言が比較的大人しかった事を思い出し、ほんの少しだけほっとしました。

「……全員知っても止めなかったのは、二人を許して認めて居たからだ」

 息子が楽しげに話すのを聞き終えた領主様は、眉間を押さえながら言いました。

「ローゼルは前に一度、ビスカスを婿に取る事の許しを得ている。その後いろいろ有って流れたが、」

 領主様はそこでビスカスをじろりと睨み、ビスカスはまた卒倒しそうになりました。

「……一度許した事は、無効になる事は無い」
「貴方っ!!」
「……お義母上?」

 領主様の言葉にいきり立った奥方様に、タンム卿が静かに微笑みました。
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