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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第2章 仕方のない問題

「ビスカスはローゼルに誰よりも忠実に仕えて居ます。それは、貴女がこの家に来る前からずっと……ローゼルが生まれてからずっと、と言っても良い程です。貴女はこの二人の事を僅かな間しか知りませんが、私達は長い間見てきたのです。その私達が認めたのですから、貴女に勝ち目は有りませんよ」
「何を呑気な事を言ってるのっ!この男は、この家を」
「……この家をどうこうするという考え方をした者は、今迄家には一人も居りません。少なくとも、その考えを口にした者は、一人もです。……義母上は何処から、その考えを思い付いたのですか?」
「っ……」

 にっこり笑った義理の息子に問い掛けられた奥方様は、顔を真っ赤にしたまま、黙り込みました。 

「……馬鹿馬鹿しい!茶番だわ!!婚約でも結婚でも、好きになさい!!」

 奥方様はどかどかと足音を立てて、部屋から去って行きました。
 タンム卿は肩を竦めて、小声でそっと呟きました。

「……惜しかったな。ま、逃げ道を塞ぐ迄は、深追いは禁物だ」
「……お兄様?」
「ん?ああ、悪い。狐狩りの話だよ……父上様?」
「……何だ、タンム」
「義母上にも、ご了承頂けましたよ?……とは言え、こんな騒ぎはもう沢山です。初床も済んでいる事ですし、いっそのこと婚約ではなく、仮婚礼をしてしまったらどうですか」
「へっ?!」
「まあ!」

 ビスカスは驚いて目を見開き、ローゼルは嬉しそうにぽっと頬を染めました。それを見た領主様は、渋々と言った体で二人に確認致しました。

「……お前達は、それで良いのか?」
「私は、構いませんわ……いえ」

 ローゼルはビスカスの方を見て、大輪の薔薇が咲いた様に晴れやかに笑いました。

「嬉しいです……とっても、嬉しいわ」
「お嬢様……」
「ビスカス?お前も、それで良いかい?」
「……俺なんか」

 ローゼルの笑顔に見惚れていたビスカスは、タンム卿に問われて、つい、今まで口癖の様に言っていた言葉を口にしかけました。しかし、途中でぐっと口を閉じると、顔を上げて、言い直しました。

「……俺はまだまだ未熟者ですが、お嬢様がいつでも出来る限りお幸せでいらっしゃれる様に、伴侶として、生涯精一杯尽くさせて頂きます」
「固いなあ」

 畏まったビスカスの挨拶を聞いて、タンム卿は苦笑しました。
 
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