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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
「へ?そいつぁ、どういう意味で?」
髪を結いながら尋ねたビスカスに、ローゼルは鏡越しに答えました。
「指輪は、手に嵌める物だから、いつでも自分の目に入るでしょう?首飾りやピンや耳飾りは、鏡が無いと、自分では見られないもの」
「……なーるほどー!そういうもんなんですねえ……!…………はい、出来やしたよー。ここ、そいつで留めて下せえ」
「ん。ありがとう」
ビスカスに言われた所を、ローゼルは髪飾りで留めました。そして椅子から立ち上がると、ビスカスの頬に軽く口づけて、長椅子に並んで座りました。
「この水晶を譲って下さったお店には、指輪に出来る職人さんは、いらっしゃるのかしら?」
「頼めば、出来るみてぇですけど……基本は原石を加工するとこまでで、仕立てんなぁ街の職人に頼んでるみてぇでしたよ」
「そうなの……一度、行ってみたいわ。刺さりそうな水晶がびっしりの洞窟って、どんなのかしら……!」
「今ぁ、ダメです!!あんなクッソ寒ぃ上につるつる滑ってズボっとはまるとこになんざ、大事なリュリュを連れてけやせん!」
断固として言い張るビスカスを、ローゼルはくすくす笑ってぎゅっと抱きました。
「滑って、はまったのね?ビスカス!」
「へえ。散々でしたよ。冬のあの辺ぁ、もう懲り懲りでさあ。あったかくなったら……ああ、リアン様とマリア様の結婚式ん時にでも、二人で行ってみやしょうかねー」
「ええ、行きたいわ!楽しみねえ!!……これ、帰ったらすぐ宝石屋を呼んで、指輪にしてって頼んでも良い?」
「勿論でさあ……」
はしゃいでいるローゼルが余りにも可愛らしかったので、ビスカスは口づけたくなりました。
柔らかな頬に掌で触れて顔を近付け、ローゼルが微笑んで目を伏せたのを確認してから、目を閉じたのですが。
一旦は大人しく目を伏せたローゼルが、唇の触れる直前にぱちりと目を開けた事に、ビスカスは気付きませんでした。