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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第10章 しずくの薔薇
「うひょえっ!?」
「驚いた?ビスカス」
口づけをする……予定だったのですが。
唇にひやりとする物が触れたので、びくっと飛び退きました。
「……驚いた?なんて、可愛いもんじゃ……っ!!」
目を開けたらそこには、手に持った水晶をビスカスの唇にくっ付けて、「ちゅー」の形に唇を尖らせたローゼルが居りました。
された事が突然過ぎて意外過ぎ、ビスカスは動悸がしていました。もし兄弟子が見ていたら「やっだあ、色ボケぇ?ゆっだーん、大敵っ!!」とかなんとか騒がれて、鍛錬と言う名の有り難い仕置きを施されて居た事でしょう。
「……今なぁ、酷ぇですよ……惨すぎやす……」
ビスカスは突如としてコレクションに加わった新手の暴虐の衝撃に、茫然としました。
その冷たい唇に、くすくす笑いと共に、暴君の唇が触れました。
「ごめんなさい、嬉しすぎて……それに、私を放って置いた事を少し懲らしめたくなっちゃって、ちょっとだけ意地悪しちゃったの」
「ぅぐぇっ……!」
ビスカスは、家鴨を驚かせた時の様な、変な音を立てました。
(何だ……何なんだ、この小悪魔ぁ……いや、悪魔にしちゃあ可愛過ぎる……いやいや、悪魔ってなあ誘惑的で蠱惑的で魅力的な姿をしてるって言うじゃねーか……俺の女ぁいつからこんな小悪魔っぷりを身に付けて……っ!!)
ビスカスのくらくらして来た頭に、ほがらかなローゼルの声が響きました。
「本当に、嬉しいわ……私、これ、一生大事にするわね」
「ぐっ……」
(何でこんなとこに天使が居んだ?いや、よく見ろこりゃあ天使じゃねえ……どう見ても天使にしか見えねぇかもしれねーが、信じられねー事に俺の女だ)
意地悪しちゃったと言われてローゼルの中に尻尾の生えた小悪魔を見、本当に嬉しいのと言われて間違えて地上に降りて来た天使を見たビスカスは、自分に「落ち着け」と言い聞かせました。
「……そんなに気負ってくれねーでも、良いんですぜ?」
しかし、そんな内心とは裏腹に、口から出たのはまたしても、かなり控え目な言葉でした。