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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「着いてる」
「若奥様も?」
「ああ」
「……出席は?」
「親族の式には、夫婦揃って。その後は……兄さんだけ、かな」
「まあ、それが妥当ですかね……」
長兄の奥方は、若奥様と呼ばれておりました。以前、病に罹った様な状態になって、ローゼルの友人とビスカスの二人を傷付けた事が有りました。そのため、静養と治療の名目で、この地を離れておりました。
今回、長兄夫妻は妹の婚礼に出席するために、一時的に帰って来ておりました。式が終われば、また転地療養に戻ります。完治したとしても、再びここに住まう事は無いでしょう。
「若奥様ぁ、順調にご快復されてる様で、良かったですね。今日ここに戻って来られただけでも、上出来でさぁね」
「ビスカス?」
「なんですかい?」
「お前は、それで良いのか?」
「……今更、それをお聞きですか?もう、こちらにお戻りなのに?」
ビスカスに苦笑されて、タンムは目を伏せました。
「そうだな、今更だな。済まない……」
「冗談です。気にしちゃいやせん……ってか、忘れてました、今の今まで」
「ビスカス……」
「若奥様が謀った事じゃあ、ねーんです。責めたって意味ぁねーですよ。若奥様ぁ、ローゼルのお義姉様なんですぜ?お元気になって欲しいに決まってるじゃねーですか」
長兄夫妻にも結婚式に出て欲しいというのは、ローゼルの希望でした。ローゼルの希望なのですから、ビスカスは何としても叶えるに決まっています。たとえ親の仇であったとしても、ビスカスは喜んで迎えたでしょう。
「……それに、今日この日を迎えられたのも、ぶっ刺されたお陰なのかもしれねーですし?」
ビスカスは、タンムにそう言って笑いました。
怪我をした事がきっかけで、ローゼルはビスカスに最初の強引な求婚をしたのです。
「お。そろそろ、行かねーとじゃねぇですかね?」
「……そうだな。……ありがとう、ビスカス」
タンムはビスカスに頷くと、気を取り直した様に言いました。
「行こう。長い長い一日の……そして、お前とロゼの生涯続く夫婦としての毎日の、始まりだな」