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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「……っびっくりしたー!!」
「お早うございます、ビスカスさん」
ビスカスを出迎えたのは、一人の侍女でした。
名を、バンシルと言います。
元々は、この館の者では有りません。都の姫で、近々果物園に嫁ぐスグリの侍女であり、乳姉妹でもある人物です。
事情が有って、若奥様が静養に出る際に、頼まれて同行しておりました。
「っおはよーごぜーやす、バンシルさん。お帰りなさいやせ?ってのも変ですね?」
「変ですか?」
「だって、バンシルさんのお帰りになる先つったら、スグリ様んとこじゃねーですかね?」
「……今はまだ、こちらのお仕事から外れて居りませんので」
バンシルは控え目に、奥の間へと向かう中扉を見やりました。
「ローゼル様は、奥でお支度中です。私はその間に、ビスカスさんのお支度をお手伝いしながら、お話しをしておく様にと頼まれました」
「そりゃ……申し訳ねーこって……」
「いいえ、必要な事ですから。私は宴席にスグリ様がいらっしゃる迄、時間が開きますし」
バンシルはそう言いながら、ビスカスのちゃんと着たのに何故かだらしなく見える正装を、あちこち引っ張ってピンとした格好に見える様に手直ししました。
「……若奥様は身内の式しかお出にならないので、お支度をお手伝いする必要も御座いませんから」
「やっぱり、そーなりやしたか」
鏡台の前に座らせられながら、ビスカスは溜め息を吐きました。
「これでも、譲歩した方です。スグリ様はともかく、サクナ様は若奥様が治られようが泣いて詫びようが、スグリ様と同席なさることを許す気は金輪際無いと思いますので」
「ですよね……」
「あなたはそれで、宜しんですか?」
「へっ?」
バンシルは、ビスカスの髪を梳きながら聞きました。