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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「スグリ様よりあなたの方が、余程大変な目に遭ったでしょうに」
「んな事ぁ、ねーです。」
面映ゆそうに髪を梳かして貰いながら、ビスカスが答えました。
「俺ぁ、あーいうのも仕事のうちですからねー。慣れてんでさぁ。でも、スグリ様ぁ、そーじゃねーでしょ?」
「ええ」
「なんたって、お姫様ですからねー。和やかに話してた女に突然刃物を向けられたら、それだけでどんなに驚きなすったか……髪を切られただけ、じゃねーんです。お気持ちの方が遥かに、ざっくり切られちまいなすったでしょうよ」
「……あなたを、見損なってました」
「へぁ?!」
その言葉と共にかみそりを取り出したバンシルに、ビスカスは恐怖の目を向けました。
(すいやせん!俺ぁスグリ様のお胸に埋まって喜んでなんかいやせんすいやせん!!)
「ちょっと……動かないでくれます?」
「ひっ……!」
バンシルはそう言うと脅えるビスカスに問答無用で石鹸を塗りたくり、大して伸びていない髭を当たり始めました。
「……ごめんなさい。先程のは、良い意味です。私の見る目が、間違っていました」
「や……」
髭剃りは、思いのほか上手でした。手早く剃り終えると顔を拭き、剃り跡に何かを塗り始めました。
「……どうしてあなたと姫様が仲良くなったり、なんだかんだ言いながらもサクナ様が信頼なさってたり、ローゼル様が結婚を決めたりされたのか、正直言うとよく分からなかったのですが」
「そりゃーそーでしょうねーえ」
ビスカスはすっかりのんびりした気分になって、バンシルに相槌を打ちました。