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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「……わかりやした。けど、髭剃りは、自分でしやす」
「いつも綺麗に剃れてないじゃないの」
「そりゃ……そーなんですけど……」
ビスカスは道具扱いが下手くそなので、髭剃りも得意では有りません。
髭が濃い方ではないので普段はさして困りませんでしたが、きちんとした格好の時はまばらに剃れている髭を、ローゼルにじろじろと見咎められたりする事も有りました。
「リュリュに、刃物を持たせるなんざ……」
「何よっ。私だって、練習したらちゃんと出来るんだからっ」
「そいつぁ、その通りでしょうが……俺なんざどーなったって構いやせんけど、リュリュが万が一怪我でもなすったらって思うと……生きた心地がしやせんや……」
「私を、信用してないの?」
「してやすよ」
(……そんなちっさな、髭剃りなんかの怪我じゃなくても……)
ビスカスはローゼルの手を取って、後で指輪を嵌める指に、口づけました。
(……いつか俺の命を捧げなきゃいけねぇ様な日が来たら、喜んでお手に掛かりてぇ位、あんたを信用してやすよ)
「……何、笑ってるのよ……」
「俺ぁ、世界一の幸せもんだなー、って思って」
「……そんなの……私だって、そぅっ……」
赤い顔でもにょもにょ呟いて唇を尖らせたローゼルに、ビスカスはにかっと盛大に笑いました。