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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題

「ありがとーごぜーやす。俺なんかを、選んで下すって」

 ビスカスは力を込めてそう言いましたが、すぐにおちゃらけました。

「……って言いそうになっちまう位、ほんとにありがてーですねー」
「あなたなんか、じゃないわ。私、ビスカスだから、結婚するのよ」
「……分かってやすよ……」

 ビスカスはローゼルを引き寄せて口づけようとして、寸前で一旦止まりました。
 そしてちゅっと軽く口づけて、少し顔を離して残念そうに言いました。

「化粧ぁ後にして頂いたら良かったですねー……」
「……落ちても良いわよ?」

 ローゼルは両腕をビスカスの首に回して、鼻先同士をくっつけました。

「ダメです。今ぁまだ、神々しい女神様をすげー綺麗で可愛い女にしちまって良いお時間じゃねーですよ?」
「ふふっ……」

 ローゼルはビスカスの唇に唇を合わせると、囁きました。

「口づけて貰えない女神様より、あなたにたくさん愛して貰えるただの女の方が、何倍も良いわ」
「……その言い方ぁ、狡ぃですよ……」

 二人はしばらく口づけを交わし合いました。

「リュリュ……これ以上は、ほんっとに、ダメです」
「ん……分かったわ」

 ローゼルは手巾を出してビスカスの唇を拭うと、悪戯っぽく笑いました。

「これからの正装の支度には、こういう時間もきちんと取らなきゃね?」
「化粧直しのお時間も必要ですよ」

 くすくす笑いながら紅を差し直し、ローゼルはビスカスに手を差し伸べました。

「では、参りましょうか、旦那様」
「へい、奥様」

 そして二人は、親族による婚姻の儀式の場へと向かいました。
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