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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題

   *

「本日は、おめでとうございます」

 二人が儀式の行われる部屋に向かうと、入り口で家令が待っておりました。使用人はほとんどが宴席の用意のため広間や厨房、招待客の控え室として使う客間に行ってしまっているので、辺りはひっそりとしております。

「ありがとう」
「ありがとうございます」

 ローゼルに続いて返事をしたビスカスは、感慨に浸りました。

 家令には子どもの頃から、使用人の先輩として何かにつけて世話になって参りました。既に「若旦那様」と呼ばれる様になっておりますが、正式な婚礼が済んだら他の同僚達とも、間に一線が引かれる事になるでしょう。
 ……とは言え、ビスカスはどう転んでもビスカスなのですから、急に威張ったり、偉そうにしたり、よそよそしくしたり、出来る訳など無いのですが。

「……しっかりな」

 家令はうっすら微笑んで、ビスカスに囁きました。

「……へい。お世話になりやした」

 お互いにしか分からない位小さく頷くと、家令は扉の取っ手に手を掛けました。

「失礼致します。花嫁と花婿が、お越しです」

 顔を見合わせて、微笑み合って。
 開かれた扉に向かって、二人は歩みを進めました。
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