この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
*
「本日は、おめでとうございます」
二人が儀式の行われる部屋に向かうと、入り口で家令が待っておりました。使用人はほとんどが宴席の用意のため広間や厨房、招待客の控え室として使う客間に行ってしまっているので、辺りはひっそりとしております。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
ローゼルに続いて返事をしたビスカスは、感慨に浸りました。
家令には子どもの頃から、使用人の先輩として何かにつけて世話になって参りました。既に「若旦那様」と呼ばれる様になっておりますが、正式な婚礼が済んだら他の同僚達とも、間に一線が引かれる事になるでしょう。
……とは言え、ビスカスはどう転んでもビスカスなのですから、急に威張ったり、偉そうにしたり、よそよそしくしたり、出来る訳など無いのですが。
「……しっかりな」
家令はうっすら微笑んで、ビスカスに囁きました。
「……へい。お世話になりやした」
お互いにしか分からない位小さく頷くと、家令は扉の取っ手に手を掛けました。
「失礼致します。花嫁と花婿が、お越しです」
顔を見合わせて、微笑み合って。
開かれた扉に向かって、二人は歩みを進めました。