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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「リアン、マリアはお元気?順調なのかしら?」
一歩控えて男二人のやり取りを見ていたローゼルは、見かねて声を掛けました。
「ああ。二人にくれぐれも宜しく伝えてくれって、言伝てを預かってるよ。とても来たがっていたんだけど、まだ暖かくなっていないし、随分お腹も大きくなって来たから、遠出させたくなくてね。かと言って、長い間一人にするのも心配なので、僕はとんぼ返りで失礼させて貰う予定だよ……さて」
リアンはローゼルに上機嫌でにこにこと話していた顔を、引き締めました。
「いつまでも世間話に興じている場合では無かったね。必要な事を、済ませよう」
「はい」
ローゼルとビスカスは、リアンにゆっくりと深いお辞儀を致しました。
「麗氷の百合たる、リアン様。私とこの者の婚姻をお認め頂きたく、ご挨拶を申し上げます」
「ご挨拶、承った」
リアンは胸の飾りピンに提げた、百合の花が閉じ込められた様に見える水晶の飾りに手を翳してローゼルに目をやって微笑み、ビスカスを見てニヤリと笑いました。
「百合の印を継ぐ者として、薔薇の印の主ローゼルとビスカスの婚姻は……」
(……婚姻『は』?)
ビスカスは、僅かにぴくりと致しました。
(『婚姻』、のあとが『認める』だったら、『を』じゃねーですか?『婚姻は認める』って、変じゃねーですかい?え?リアン坊ちゃま?)
リアンは子どもの頃から、ローゼルの事が大好きです。
独り身だった頃はともかく、妻を娶った今となっては、ローゼルが悲しむ様な事を言うとは、思えません。
それに、リアンは身重の妻のマリアが心配だから、早く帰りたいと言っておりました。ビスカスに意趣返しをするだけの為に反対してだらだらと式を引き伸ばす事は、望まないでしょう。
……ですが。
「婚姻」の次は、「は」だったのです。
(……『婚姻は』……『は』……『は』の次は、何なんですかいっ……!!)
続きの言葉をなかなか口にせず無駄に溜めを持たせまくるリアンに、ビスカスは頭を下げたまま、やきもきしました。