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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「ロゼ……」
長兄は、口を開いては閉じるということを、何度か繰り返しました。
「……私は……私達は、お前達に……何と言ったら」
「過ぎた事は過ぎた事ですわ、お兄様」
「しかし」
「……過ぎた事になさって下さい、御義兄様」
長兄がまだ何か言いたげにしている所に、ローゼルの後ろから声がしました。
声の主は、ビスカスでした。
「ビスカス……」
ビスカスは心配そうに声と視線を向けて来たローゼルの横に立つと、背中にぽんと手を置いて、微笑みました。
「御義兄様。私とローゼルに何か仰りたい事が有るのでしたら、どうかそれを婚姻の許可と祝福に替えて頂けませんか」
「それは、勿論」
「ご承諾、有り難う御座います」
ビスカスは会釈をすると、長兄の後ろに向かって声を掛けました。
「それで、宜しいですか?御義姉様」
「ビスカス!」
長兄の後ろの人影は、声を掛けられて、びくりと震えました。
それを見たローゼルは咎める様に夫の名を呼びましたが、ビスカスは淡々と妻の名を呼び返しました。
「ローゼル。これは、私と、御義姉様の間の話です」
ビスカスにぴしりと言われて、ローゼルは思わず口を閉じました。その背にまたぽんぽんと触れて微笑むと、ビスカスは若奥様の方に歩み寄りました。
「……どうか、婚姻の許可を」
そして、長兄からも一歩離れ、周りには聞こえない位の声で、静かに会話を交わしている様でした。
しばらくの後、ビスカスはローゼルの元に戻りました。
「ローゼル。御義兄様と、御義姉様に、ご挨拶を」
「……はい」
ローゼルは頷くと、長兄夫妻に一礼しました。
「お兄様。私とビスカスの婚姻をお認め頂きたく、ご挨拶を申し上げます」
「喜んで認めよう」
「お義姉様。婚姻をご承認頂けますか?」
「……ええ……認めます……」
「ありがとう御座います」
「有り難う御座います」
頭を下げながら、ほっと安堵の息を吐いたローゼルが顔を上げると、長兄が口を開きました。
「この家を頼んだ、ロゼ」
「……はい、お兄様」
「うん。……ビスカス」
「はい」
長兄は、深く頭を下げました。
「……ロゼを、頼む。」
「承知致して居ります。」
こうして、家族への最初の挨拶が済みました。