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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
(お二人共っ?!この後、大御所様方が控えてんですからっ……お願ぇですから、穏便に済ませて下せぇよぉおおお!!)
ビスカスが心底やきもきしていると、ふっと空気が緩みました。
「止そう、ロゼ」
「お兄様」
「済まない、ちょっとした意地悪だ。……妹が嫁に行ってしまうというのは、淋しいものだな」
(……へ?淋しいだあ?)
淋しくて意地悪をした等と、子供の様な事を言っておりますが。
嫁に行くと言っても、ローゼルは今まで通り館に居るのです。その上、仮婚礼で初夜を済ませて居るのですから、実質的にはとっくに嫁入り済みです。
この婚礼で変わった事は、元居た部屋から新しくなった夫婦の居室に引っ越した事位ですが、別にそれでタンムの部屋から遠くなった訳でも有りません。
何が淋しいと言うのでしょう。
「目出度い日に、悪かった」
頭が疑問符で埋め尽くされたビスカスをよそに、兄妹の会話は続きます。
「……私も……あんな事位で、大人気なかったですわ」
(……あんな事……?)
あんな事とは、どんな事でしょう。
(『花嫁なのにつんけんするな』って奴ですかい?でも、あん時ゃもう既に、ご機嫌斜めじゃ有りやせんでしたか?)
ビスカスは、ますます分からなくなりました。
なのに、ローゼルとタンムの間では、支障無く話が通じている様です。
(結局、兄妹の事ぁ、外の者にゃあ分かんねーって事なのかね?……夫なんて、儚いもんだぁねー……)
「無論、どんな挨拶で有ろうが、二人の結婚は諸手を挙げて認めるよ」
「ありがとうございます、お兄様」
ビスカスが目の前の全く付いて行けない遣り取りに匙を投げている間にも、さらさらと挨拶は進みます。
「私は、君達の婚姻を認める。おめでとう、二人共」
「ありがとう御座います」
(……ま、良っか、落ち着いたんなら!)
腑に落ちないながらも、ビスカスもローゼルに倣って、頭を下げて。
思いの外荒れた次兄への挨拶も、どうにか無事に済みました。