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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
*
「お祖母様」
「こちらへいらっしゃい、ローゼル」
「はい」
家族の三番目はこの館の先代の女当主、ローゼルの祖母である大奥様でした。
「お目出度う。とても綺麗よ」
「ありがとうございます」
祖母に微笑まれ、頬に口づけられたローゼルは、子供の様にはにかみました。
「自分の道は、自分で決めなくては悔いが残るものですからね。お前の決めた通りになさい」
「はい」
大奥様は優雅に軽く美しいお辞儀をした孫娘に満足そうに頷くと、傍らに控えていた小男に目をやりました。
「ビスカス」
「はいっ」
ビスカスは、かちかちに固まりました。
現当主であるローゼルの父の領主様に話し掛けられても、こんなに緊張する事は有りません。
「貴方と踊った時、ローゼルはとても伸び伸びとしていたわ」
「……はい」
威厳に満ちた老貴婦人は、ビスカスの纏っている緊張感に気付いていないかの様に、けれどローゼルに対する時よりも幾分ゆっくりと柔らかく、話し掛けました。
「一人で踊るよりも能く踊らせてくれるお相手が見つかる事は、稀有で、幸せな事ですよ」
「大奥様……」
「あらあら!」
大事な家付き娘の婚約をぶち壊した自分に、身に余る有り難い言葉を掛けられて、ビスカスは思わず感極まって泣きそうになりました。
そこへ、なだめる様な、からかう様な、悪戯っぽい相槌が入りました。
「『大奥様』は、少し余所余所しくは無いこと?貴方はもう、身内でしょう?」
「失礼致しましたっ……御義祖母様」
癖で「おばーさま」となりそうな発音を「おばあさま」になるように引き留めながら、ビスカスは全身に大汗をかきました。
「ローゼルを、頼むわね。これから色々な事が有る事でしょうけど……末永く、宜しくね」
「はいっ。私の全てを捧げて、尽くします」
「そんなに気を張らなくても、大丈夫ですよ……貴方が今までしてくれていた様に、これからも……ただ」
「ただ、っ?」
「曾孫には、元気なうちに会いたいものね」
「っ」
雲の上の老貴婦人にあろうことか子作りを急かされ、ビスカスは真っ赤になりました。
(大奥様っ……じゃねぇや御義祖母様……すいやせん、俺ぁ子作りの事なんざっ、これっぽっちもっ、考えてやせんっ……!)
真っ赤になったビスカスは、心の中で、懺悔しました。