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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「私、ビスカスは、」
ビスカスは、そこで言葉に詰まりました。
結婚式の練習は、散々致しました。ローゼルはどうとでもなる様な事もビスカスはつっかえまくったので、飴と鞭を駆使されながら、随分前から練習したのです。
誓いの言葉も、考えては消し考えては消し、最後には訳が分からなくなりながら、必死でまとめて書き付けて、毎日何百回も唱えました。結婚式で、花嫁に誓うための言葉です。普段なら相談するなり聞いてもらうなりするローゼルには、見せられません。ローゼルに見せない物を、他人においそれと見せる訳には参りません。
そんな風に幸福な七転八倒を繰り返しながら、万全を期してこの日を迎えた筈……だったのですが。
(あー……忘れちまっても、仕方ねーですよねー?……今まで考えてた事なんざ全部吹っ飛ぶくれぇ、綺麗で、幸せで、夢よりもよっぽど夢みてーなんですから……)
全て忘れ去ったビスカスは、不安顔になりかけたローゼルを見上げてにこっと笑うと、ローゼルの手を押し頂きました。
「私、ビスカスは……この命の有る限り、貴女を敬い」
ビスカスは、ローゼルの指に口づけました。
「貴女に、誠実に仕え」
口づけた指と手を、両手で包み込みました。
「私の全てで貴女を愛する事を、誓います」
そして、持っていた指輪を、しなやかで美しい指に填めようとしました。
……しましたが。
「……ぅおっ?!」
(……落としたっ!?)
どうにかこうにか執り行われている儀式の成り行きを和やかに眺めていた一同に、緊張が走りました。