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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「あ!………………あ。」
ビスカスの手から離れてころんと床に転がった指輪を、細い指が流れるようにすっと拾いました。
その指の主であるローゼルは、ビスカスに微笑むと、花片の様な唇をゆっくりと開きました。
「……わたくし、水晶の薔薇、ローゼルは、」
ローゼルはビスカスの手を取って、「落ち着いて」と言うように、優しく撫でました。
「貴男を愛し、」
目を合わせて、少女の様に純粋ににこっと笑いました。
「貴男を慈しみ、」
手のひらにそっと二回、唇で触れました。
「貴男を敬い、」
指輪をビスカスの親指と人差し指で摘まませて、そのまま片手で包みました。
「生涯、共に歩む事を……」
「あ」
ローゼルは悪戯っぽい笑みを浮かべて、ビスカスが持ったままの指輪に、するりと指を滑らせました。
指輪は見事に、目的の指に嵌まりました。
実のところ、結婚式の練習中のビスカスは、指輪を落としこそしませんでしたが、一度で上手くローゼルの指に嵌められたためしが無かったのです。
小さな薔薇の咲いている指輪をそっと撫でながら、ローゼルはビスカスに、晴れやかな満面の笑顔を向けました。
「……ここに、誓います。」
「リュ……っ……」
その笑顔は、馥郁とした香りを放つ薄紅色の大輪の薔薇が、春の光の中で満開になったかの様でした。
感極まったビスカスは、目に涙を浮かべました。