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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
ローゼルは長兄の手を取ると、共に踊り始めました。
長兄とローゼルは、年が離れております。
ローゼルが物心付いた時には、長兄はもう学校に上がっておりました。タンムの様に一緒に遊んだり、世話をされた記憶はほとんど有りません。
「お兄様と踊るのは、初めてね」
「……お前は、憶えてないか」
「え?」
長兄は妹を見て、柔らかく微笑みました。
「お前がやっと一人でしっかり歩ける様になった頃だった。二つくらいだったかな……私は学校で踊りを習って、 お母様に見せていた」
「お母様に……」
長兄の踊りは、奇抜な振り付けや技巧などは有りませんでしたが、落ち着いていて安心して身を任せる事が出来ました。生真面目で穏やかな兄らしい踊りです。離れて暮らすことになってしまった兄と踊りながら、ローゼルは懐かしい様な淋しい様な気持ちになりました。
「そうしたら、側で見ていたお前が立ち上がって、嬉しそうに近くに来て、手を伸ばして来て……一緒に踊ったんだよ」
「そうだったの……」
「お前の初めての踊りの相手は、私かもしれないよ?お母様も、手を叩いて喜んで……ただ」
「ただ?」
「お母様に用事を頼まれて席を外していたビスカスは、戻って来て、愕然としていたな」
「まあ……!」
はにかんで嬉しそうに笑うローゼルを見て、長兄は眩しそうに目を細めました。
「お前に重荷を負わせる事になってしまったが……どうか、幸せになっておくれ。お前達なら、大丈夫だ」
「ありがとうございます、お兄様」
「おめでとう、ロゼ」
最後に、くるりと回って。
ローゼルは長兄の手から離れて、次の相手の方へ、手を伸ばして踏み出しました。