この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第3章 オレンジの問題
結局その店には行かなかった訳ですし、ローゼルにその事をわざわざ知らせなくても、嘘という訳では有りません。それでも少しだけ後ろめたかったのでローゼルには家に居て欲しかった、というのも、一人で出掛けようとした理由のひとつでは有りました。
「……分かったわ。早く帰って来て頂戴ね?」
「もちろんでさぁ」
ビスカスはローゼルの額に口づけて、一度きゅっと抱き締めると、立ち上がりました。
「用が済んだら、お土産持って飛んで帰って来まさぁね」
「……お土産?」
「ええ。サクナ様んとこで、ちっと譲って頂きてぇもんが有んですよ」
「そうなの!楽しみにして居るわ」
「へえ。後で一緒に楽しみやしょうねー……そのまま、少しお休みになりやすか?」
ビスカスはローゼルに尋ねると、ローゼルのお気に入りのブランケットを棚から取って差し出しました。
「ええ、有り難う。……ビスカス?」
「何ですかい、お嬢様」
「行く前にもう一度、お前を見せて」
「へ?」
「洗濯屋に出すのなら、着替えるのよね?……お前が正装している所を、もう一度ちゃんと見たいの」
「……お安い御用で」
ビスカスはローゼルの目の前でくるりと回って、そのままぺこりとお辞儀をしました。
「ビスカス?」
「何ですか?」
「……行く前にもう一度、ぎゅっとして」
「お安い御用過ぎますよ、お嬢様」
ビスカスはローゼルをブランケットの上からぎゅっと抱き締め、「ちょいと、行って来やすね」と言いました。
* * *
ビスカスが部屋を出て行った、しばらく後。
ローゼルは、半ば横になっていた長椅子に、起き上がりました。それから、立ち上がって鏡台の前まで歩いて行って、袖の引き出しを開けました。そして、そこに入っていた物を両手で取って、にっこり笑って口づけました。その後、長椅子まで戻って来ると、大事そうにそれを抱えてブランケットに潜り込み、ゆっくりと目を閉じました。