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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「ローゼル」
「お父様」
ローゼルは、待ち構えていた領主様の前で立ち止まり、お辞儀を致しました。
領主様は手を差し出し、ローゼルはその大きな掌の上に、そっと手を乗せました。
ゆっくりと、多少のぎこちなさと共に、二人は踊り始めました。
「……先程は、済まなかった」
「いえ……タンムお兄様にも、謝られましたわ」
「そうか……しかし、あれは私の妻だ。本来であれば、私が手綱をしっかり握っていなくてはいけないのだが」
「仕方ない事ですわ。お父様は、お優しいもの」
ローゼルは、薄く微笑みました。
ローゼルの母が亡くなったのは、ローゼルがまだ十代半ばの頃でした。まだ若かった領主様は、妻亡き後しばらくは独りで居りましたが、立場上独身で居る事は難しく、何人かの女性を紹介されてその中から奥方様を後妻として迎えたのです。
後妻に入った奥方様は、領主様と親子ほど年が違った為、我が儘放題に領主様を振り回しましました。
また、奥方様は当初から、自分は妻として家に入ったので母として入った憶えは無いと言い放っておりました。ですから、兄二人にもローゼルにも、口出しをして来る事は有りましたが、母親らしい気遣いを見せてくれた事など有りません。
それでも、父が伴侶に選んだ女性です。奥方様と意見が合わない事が有っても、子である兄妹三人が不満を言うことなど許されません。
今回の結婚も、事有るごとに散々な事を言われておりましたが、ビスカスは気にしない様にと、ローゼルに常々言っておりました。