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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「……いつ終わるのかしら、あの酷い当て擦り」
寝床で夫にぴったりくっ付いて髪を撫でられながらそんな愚痴を零した事が、ローゼルには今まで何度か有りました。
「気にしねーのが一番ですよ。怒った猫かなんかが喚いてるとでも思っときゃ良いです」
「でも」
浮かない様子のローゼルの滑らかな背中を、ビスカスは優しく撫でました。
「俺達にゃあ分かんねーけど、奥方様にゃあ奥方様なりの理由が有んでしょうよ」
「理由なんて無いわ。ただの難癖よ」
「……リュリュ?」
「なぁに?」
「気を悪くしねーで下せーね?」
ビスカスはローゼルの額に口づけて、そのまま頭の上で呟きました。
「奥方様は、リアン様との婚礼にゃあ反対なさっちゃいやせんでしたでしょ?何が何でも反対しかしねえ、って訳じゃあねんですよ。俺との結婚を反対すんなぁ、リュリュの事やお家の事を、奥方様なりに考えての事でさぁね」
「ビスカス……」
ローゼルは切なくなって、夫をぎゅっと抱き締めました。
「……私の事を考えてる訳じゃないわ。この家の娘を思い通りにしたいだけよ」
ビスカスは、妻の頬に、右左と口づけました。
「思い通りになんか、させやせんよ。……心配しねーで、リュリュ」
「ん……」
そんな風に、抱き締められて口づけられて、不安な気持ちも体もとろとろに蕩けるまで抱かれてやっと眠りに落ちた日が、幾度有ったでしょう。
「きっと、お義母様も大人しくなられますわ。正式な婚礼が済みますし、お祖母様もはっきり仰って下さったから」
奥方様が領主様の妻で居続けたいのなら、ローゼルの結婚も認めなくてはならないのです。無意味な当て擦りは減るでしょう。
「不甲斐ない事だ……この年になってもまだ母親にそんな事の尻拭いをさせているとは」
話している内容のせいか、それとも踊りが不得手なせいなのか、領主様はぎくしゃくと動きながら、溜め息を吐きました。