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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「緊張ってか……リュリュが綺麗すぎて、すっかりぽーっとなっちまって……」
ビスカスは艶々した妻の唇を、ちゅっちゅっと音を立てて喰みました。どうせ次の式の前には化粧直しをするのでしょうから、崩れる心配は無用です。
「誓いの言葉だって、すげー考えて決めたってのに吹っ飛んじまって、結局とっさに作っちまったんで」
「まあ!そうだったの?!」
「へえ……どっか、変でした?」
「全然!少しも変なんかじゃ無かったわ、素敵だった……けど」
「けど?」
恐る恐る尋ねたビスカスに、ローゼルは唇を尖らせました。
「あなた、まだ私のこと、お仕えするお嬢様だって思ってるのじゃなくて?」
「へぁ?」
「とっさに出て来た誓いの言葉が、『貴女に仕えます』だったり、踊りの後、お父様に答えたとき『命に代えても』って言ったり……」
「や、そりゃあ……」
ビスカスとしては、ローゼルを想ったら自然に口に出てしまった言葉達なのですが。
「俺の奥様ぁ、そんな事なんかに大層ご不満なんですねえ」
「そんな事じゃないわ、だって……命に代えられたら、困るもの。私、出来るだけ長生きするつもりなのよ?」
「あー……」
(そういや……リュリュを家に連れ込みやがった野郎んとこに乗り込んで執事に怪我ぁさせられた時、そんなこと仰ってやしたっけねー……)
あの時は、怪我で手が使いにくくなったビスカスに、ローゼルが雛鳥に餌をやるかの様に、手ずからスープを飲ませてくれたのです。
その事を思い出したビスカスは、胸の奥と頬が、ほんのり温かく、くすぐったくなりました。