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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「……しかし、こりゃあ……すげぇな……」
踊りは「三周目」に入り、益々あでやかさを増しておりました。
見ている者が息をするのも忘れそうな程に切れが良く、万華鏡の様に次々と高度で洗練された振りが流れてゆく、この上なく美しい踊りなのですが、同時に、とてつもなく艶っぽいのです。
芸術的ではありますが、ある意味、目の毒です。
スグリは、知らず知らずの内に体をサクナに持たせかけぴたりと触れ合わせておりました。
(……私もだけどっ……見てる皆さんも……)
周りにちらっと目を走らせると、あちこちで男女の親密な空気が流れております。
スグリの様にお相手に軽く触れているどころではなく、口づけ寸前の二人、きわどい所にベタベタ触り合っている二人、体を隙間なく重ね合わせ寄り添う二人など、もはや踊りを眺めるよりも、踊りに自分達が煽られてそわそわするのが止められない……といった所です。
スグリは、むずむずして居たたまれなくなりました。目のやり場に困った末、サクナの腕をぎゅっと抱いて、顔を半分隠しました。
「ん?どうかしたか、奥様」
「……どうもしない……」
「あー。見てたら踊りたくなったのか」
「ううん。あんなには、踊れないもの」
「そういう意味じゃ無え」
「え?」
耳に唇を寄せられて、スグリの体が小さくぴくりと跳ねました。
「……なんなら、もう帰って良いぞ?奥様のご要望じゃあ仕方ないから、帰って寝室でたっぷり踊るか」
「……ばかっ……」
そう囁かれて、体の奥の方がきゅうっと疼きました。
けれど、踊りがどんなに色っぽくとも、今日はスグリの妹分である大事な友達の結婚式なのです。途中で帰る訳には参りません。
「いいえ、帰らないわ。ロゼとビスカスさんの大事な日を、ちゃんとお祝いしたいもの」
「……そうか」
サクナはスグリに微笑むと、しがみつかれていた腕をスグリの腰に回して抱き寄せました。
「見ろ、もうすぐ仕舞いだ。『色々な事が有った末、花嫁は花婿の元に嫁ぎましたとさ』だな」
サクナがお伽話の様に、語った通り。
いつの間にかまた無邪気な笑顔に戻ったローゼルは、喜びを全身から滲ませて、くるくると回りながら満面の笑みのビスカスの腕の中に、納まりました。