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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題

「リュリュ。俺達も、控え室に戻って休みやしょうか」
「ええ……あ、待って」

 ローゼルは自分を抱き上げようとしたビスカスを止めました。

「このままで大丈夫よ、歩けるわ」
「本当に?」

 ビスカスは、無理や我慢をしていないかどうか、気遣わしげにローゼルの目を覗き込みました。ローゼルはそんなビスカスにふっと目許を緩ませて、甘える様に微笑みました。

「ええ。でも、手は借りたいわ。良いかしら?」
「勿論です」
「ありがとう」

 ビスカスはローゼルをゆっくり立たせて、自分の腕につかまらせました。
 二人はローゼルに無理がないゆっくりとした足取りで広間を後にして、控え室に向かいました。


   *


「何か飲みやす?それか、何か食べときましょーか?」
「ありがとう、大丈夫よ」

 控え室に戻った二人は長椅子に腰掛けて、今日これからの為に必要な話を、少しだけ致しました。それが終わると、ビスカスはローゼルを休ませるべく、あれこれと世話を焼き始めました。

「踊って、汗かいたんじゃねーですか?お水だけでも、召し上がりやせんか」
「そうね。お水は、少し頂こうかしら」
「畏まりやした。少々お待ちを」

 ビスカスはいそいそと立ち上がり、水差しからグラスに多からず少なからずの量の水を注いで、ローゼルの前に置きました。

「今日もですけど、これからぁお仕事がお忙しくなりやすでしょうからねー。なるったけ上手に休むようにしねーとですねえ」

 今でも徐々に、そうなって来ては居りますが。
 ローゼルは今後サクナの屋敷での仕事を少しずつ控えて行って、領主見習いとして、勤めて行かなくてはなりません。

「……そうでも無いわよ」
「へ?そーなんですか?」

 ローゼルのグラスを覗き込んだままでの呟きに、この前ご自分でもそう言ってやしなかっただろうか……と、ビスカスは正装の首元を緩めながら考えました。

「ええ。仕事が凄く忙しくなる時期は、延期になると思うわ。……多分だけど」
「ふーん?さいですかー?」
「……ビスカス?」
「何ですかい?」

 飲み終えて空になったグラスを、ビスカスは何気なく片付けました。

「あのね……私達……の、事なんだけど……」
「へえ?」

 ローゼルはビスカスを上目遣いでちらちら見ながら、何か迷って、躊躇っている様でした。

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