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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第5章 慣れの問題
「……リュリュ?」
「なあに、ビスカス……?」
ビスカスは、名前を呼ばれて無邪気に笑うローゼルを見ていられずに、目を逸らしました。
「……なんか……すっげー疚しい気分でさあ……」
ローゼルが少女だった頃の名を呼びながら大人のローゼルの胸に顔を埋めてあれこれ致していると、色々と疚しい事を思い出してしまいそうになります。思い出さない様にしようとするとますます記憶が蘇り、どうにも堪らない気分になる……という後ろめたい悪循環に、ビスカスはずっぽり嵌まりかけておりました。
「え?やらしい気分?」
「いや、やらしいじゃ……」
ビスカスは反論しかけましたが、止めました。
疚しいとやらしいは本来は同じ意味では有りませんが、今のビスカスには、似たような物です。
「……大事なお名前呼んでるってのにやらしい気分になっちまってたら、いけやせんよねー?」
「いけなくないわよ?」
ローゼルはビスカスのふざけ半分の言葉にさらりと答え、きゅっと胸に抱き締めて、額にちゅっと口づけました。
「だって、私もやらしい気分になってるんだもの」
「……リュリュ……」
やらしい気分になっているとローゼルに言われたビスカスは、疚しい気分が吹っ飛びました。
「ビスカス?」
「へえ」
「私を、お前の……」
やらしく愛しいローゼルをどうしていいか分からなくなり気の抜けた返事をしたビスカスに、ローゼルは恥ずかしそうに言いました。
「……あなたの、好きな様にして?」
「ぅぐふっ!!!!」
「……何よ。」
顔を真っ赤にして絶句したビスカスの顔を強引に上向かせて、ローゼルはちゅっと口づけました。そのローゼルに口づけ返して、ビスカスはぼやきました。
「リュリュって呼ぶより、そいつの方が慣れやせんっ……」
「そいつ?」
「その……『あなた』って奴で」
「慣れて。」
「へえ」
「私だって、旦那様をいつまでも『お前』だなんて、呼べないもの。あなたが慣れないと、私も慣れないわ」
「……そのうち、慣れんですかねー?」
「沢山呼んでたら、慣れるわよ」
「あー……リュリュ?」
「なあに?」
「……もうすぐ、夕飯だったんじゃねぇかなー、って……」
話の合間にちゅっちゅっと口づけ合っていた二人は、残念そうに顔を見合わせました。
それからローゼルは溜め息を吐いて、またビスカスに口づけました。