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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題
理由の二つ目は、ローゼルにはまだ十にもならないその頃から既に、美貌と威厳と気品とが、実際に備わって居たという事です。
ローゼルは生まれた時から大層美しい赤ん坊で、大きくなるごとに、益々美しさを増してゆきました。このまま成長していけば、世間に噂される様な美女になるのは間違いない事でしょう。
三つ目には、ローゼルの傍らには常にビスカスが居たという事も有りました。自分を讃える存在が常に近くに居るという事も、ローゼルの揺るぎない自尊心の源となって居たのです。
「そうね……リュリュも、やっぱり薔薇かしらね?きっと、薔薇の様に美しい娘になるでしょうから」
お気に入りのオレンジの薔薇に手を添えて香りを楽しみながら、奥様は娘に言いました。
「えーっ!!リュリュ、もっと珍しい花がいい!サクナのおうちの温室にあるバナナとか、パイナップルとかがいいわ!!」
ローゼルの言い分を聞いて、奥様はにっこり微笑み、ビスカスはこっそり吹き出しました。
領主様の友人が当主をしている果物園の貰われっ子であるサクナは、ローゼルと兄達の幼馴染みです。先日領主様が温室を見に行った際にビスカスも含めた子ども達を連れて行き、ローゼルは大興奮して帰って来たのでした。
しかし、バナナの花は巨大で、パイナップルの花は地味です。ローゼルには果物の花など似つかわしくない、とビスカスはサクナの姿を思い出しながら、少々苦々しく思いました。
「バナナやパイナップルも良いけれど、知っている人が少ないんじゃあないかしら?」
奥様は膨れている娘の頬に優しく触れて、微笑みました。
「貴女は私よりも元気で活発だし、お日様の様に明るいから、オレンジ色のこの薔薇が良く似合うわよ?……ビスカスも、そう思うでしょう?」
「お嬢様にはどんな花だって、誰よりも良くお似合いです!」
急に奥様に聞かれたビスカスは勢い込んで答えました。
「でも、お嬢様は、どんな花よりもずっとお綺麗です。薔薇だって、お嬢様よりお美しいのなんか、このお庭にだってどこにだって、有りゃしませんよ」
「あら!ビスカスったら、お口が上手になったわねえ!」
奥様はころころと笑い、母とビスカスの会話を聞いたローゼルは、つんとして言いました。