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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題
「お母様?ビスカスになんか、何を聞いても無駄よ。だって、何を聞いても私が一番だって言うし、私の事が大好きなんだもの」
「まあ、リュリュったら」
「半分はその通りですが、半分はその通りじゃ有りませんよ、お嬢様」
ビスカスが真顔で反論すると、ローゼルはぷうっと膨れました。
「何よ!ビスカスはリュリュの事、大好きじゃないって言うの?」
「もちろん大好きですよ!その通りだって半分は、そこに決まってるじゃないですか!」
五つも下の我が娘のご機嫌に本気でおろおろしているビスカスを見た奥様は、くすっと小さく笑いました。
ローゼルの兄二人もビスカスと同じ年頃なのですが、勉学やその他の、この家の男子としての教育を受けるのに忙しく、少しだけ年の離れた妹と仲良く遊ぶ時間を持つことは滅多に有りません。その点、ローゼルが生まれた時から何くれとなく面倒を見てくれているビスカスは、繊細で疳が強く難しい所のあるローゼルにとっては、兄弟や友達以上に親しくて、心を許せる存在で有ったのです。
「その通りじゃ無い半分ってのは、そこじゃ無ぇですよ!お嬢様がどんな花でもお似合いになって、どんな薔薇よりお美しいってのは、俺がお嬢様が大好きだからじゃ有りません。それに、お世辞でも何でも有りません。ただ、それが本当に本当の事だって言う、それだけです」
「まあ!ビスカスったら!」
奥様はビスカスの大真面目な言葉におかしそうに声を上げて笑い、ローゼルはそんなの当然よという顔をして澄ましておりました。
「そんなにリュリュを好きで居てくれて、ありがとう。いつまでもこの子と仲良くしてやって、力になってやって頂戴ね」
* * *
(……俺でさえ淋しくなんだから、お嬢様ぁさぞかしお淋しいだろうよ……)
奥様がお元気だった頃の事を思い出していたビスカスは、また溜め息を吐きました。
(薔薇ぁ見りゃあ奥様を思い出すだろうし、お食事時だってお好きだったお料理を見りゃあ思い出しちまうだろうし……今日の刺繍の手習いだって、最初は奥様が手解きなすったんだもんな。思い出さずにゃ居られねぇだろ……)
ローゼルが近頃酷い癇癪を起こしたり殊更暴君の様に振る舞うのは、周りが言っている様に我が儘だからという訳ではではなく、淋しいのを我慢して居るからだろうとビスカスは考えておりました。