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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題
領主様やお兄様方はそれぞれ仕事や勉学で多忙な身ですし、ローゼルと違って大人です。淋しさをやり過ごしたり、紛らせたりする事も出来るでしょう。
奥様がご病気の間もローゼルほど長く付き添っていた訳では無いので、弱っていく姿をずっと見ていた訳では有りません。父や兄が不在の分も母を励まそうと長い間献身的に寄り添って居たローゼルは、亡くなった直後よりも少し時間の経った今の方が、辛さが増して居る様でした。
(日が経ちゃあ平気になって行くもんだって皆さん思ってるんだろうが、そんな訳にゃあいかねぇさ。だけどなあ……若ぇ娘が、部屋に籠もりっきりってのもな……)
ビスカスが物思いに沈んで居ると、突然誰かにぽんと肩を叩かれました。
「っ?!」
「やあ、ビスカス」
「……タンム様!今日は、お休みでしたか!?」
タンムはローゼルの二人の兄のうちの次兄で、ビスカスと変わらぬ年頃です。
端正な顔立ちで賢く落ち着いており、いつもにこやかなので柔和な性格に見えますが、腹の底の読めない所が有るとビスカスは思っておりました。
幼い頃に一緒に遊ぶと蛙の尻に麦の茎を差して息を吹き込んで膨らませては川に流してみたり、蟻の巣を見つけ次第壊してはその後の蟻の行方を観察したり、葉っぱと良く似た青虫の居る枝を見つけてはローゼルに贈り物だと言って渡し、泣かせたりしていたのです。成長してからはそう言った憐れみより興味が勝った様な行動は余り見せなくなっていましたが、以前サクナの家の温室に行った時に一番熱心に見ていた物は、虫を食べる植物の鉢でした。
「ああ、たまたま約束が流れてね。……随分集中していたな。庭の手入れかい?」
「や、手入れって程じゃ……ちゃんとした手入れにゃあ、庭師が居ますから」
「……お前とロゼとお母様は、よくそうやって庭の世話をして居たね」
タンムはそう呟いて、ふっと瞳を翳らせました。