この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題

「お兄様に頼まれたのよ、白薔薇を切ってきてくれって。……飾りたいから、って。見に来たんじゃ無いわ」
「そうでしたか」
もうすぐ奥様の月命日です。それを口実にローゼルに庭に行くように伝えたならば少しは話もしたのだろうと、ビスカスはタンムに感謝しました。
「白薔薇ですね。俺がお切りして参りやしょうか?」
「え」
薔薇はここからも見えては居ますが、植わっている場所は少し離れています。足元が危うかったローゼルを気遣って、ビスカスはローゼルに代理の提案を致しました。
「一輪で宜しいですか?……ちっと待ってて下さいねー」
「ちょっと、お前、」
ビスカスは庭の手入れ用品の置き場に赴きました。そして懐から針金を取り出して、扉の鍵を開けました。それはビスカスが護衛の修行に行った間に唯一修得することが出来た、道具を扱う技術でした。……ただ、会得する迄は、かなり強烈な脅しをずっと掛けられ続けたのですが。
扉を開けたビスカスは、中の棚を見回して、小ぶりの鋏を手に取り……かけて一旦手を引いて、もう一度中を見回すと、剪定用の持ち手の長い大きな鋏を手に取りました。
「よし……!」
「『よし!』じゃ無いわよ!お待ちなさい、ビスカス!」
「っうわ」
ビスカスが鋏を手にして振り向くと、ローゼルが息を切らして目を怒らせて立っていました。
「っぶねぇですよお嬢様!!俺ぁ鋏持ってんですよ、近寄らねぇで下せぇよ!!」
「鋏を置きなさい、ビスカス。お前に薔薇を一本だけ切るなんてこと、絶対無理よ!」
「ひっでぇなあ……俺ぁわざわざこっから離れて、修行にまで行ったんですぜ?」
「それ、剪定の修行でも鋏の修行でも無いじゃないの!!危ないわよ、止めなさいったら!!」
「お嬢様こそ、危ねーですから下がってて下せぇよ……あー、これこれ、白薔薇白薔薇」
ビスカスは結果的にはローゼルを引き連れて、薔薇の植わっている一角までやって来ました。

