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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題

* * *
「行ってくるわ」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様。」
ローゼルは、久し振りに外出をしておりました。先日家での個人授業を受ける予定をお断りしてしまった、刺繍の先生のお宅でのお教室にやって来たのです。
「お帰りは何時頃ですか?」
先生宅の玄関で訪いを告げようとしていたローゼルに、ビスカスは聞きました。
「どうしてお前にそんな事言わなきゃいけないの」
「お迎えに参りますので」
「今日は良いわ。他の皆さんと帰るから」
その言葉を聞いたビスカスは、何と返事をしたものかと迷いました。
ローゼルは、友達が多く有りません。
領主の一人娘であり、小さい頃から抜きん出て美しく人目を惹かずに居られない容姿を持ち、高飛車で自分勝手で人に折れる事を知らない性格で、同じ年頃の子たちに比べて賢かったローゼルと友達になりたいと言う子どもは、あまり居なかったのです。学校の同級生や、何かの宴の際に親に言われてやって来た子でも、相手が引け目を感じたり嫉妬したり話が合わなかったりすることが多く、友達と言っても差支えが無い位親しくなったのは、タンムの学友でもある果樹園のサクナくらいです。
そんな中で、刺繍やこの地の踊りといった習い事は、ローゼルにとって友達と呼べる様な知り合いが幾人か居る、数少ない場所でした。それらは集まってくる女達の年代がまちまちでしたし、やる事が決まっていましたので、性格や容姿や家柄や賢さとは無関係な部分で、人と付き合うことが出来ました。親しいと言う程では無くても、仲の良いご婦人方は何人か居たのです。
「……畏まりました。ですが、皆さんとお帰りになるにしても、ご一緒はさせて頂きます」
最近塞いでいたローゼルが友達と過ごして気晴らしをするというのは、喜ばしい事です。しかし、ビスカスには手放しでは賛成しかねる理由が有りました。
「遠慮するわ。帰って頂戴」
「そうは行きやせん」
「どうしてよ」
「俺はお嬢様の護衛ですから」
理由を話すのは躊躇われたので仕事を理由にしたところ、ローゼルはキッと柳眉を逆立てました。
「子供扱いしないで。女の集まりに混じるなんて不粋だわ」
「混じりゃしません。離れて付いて参ります」
「女の跡をつけるなんて真似はお止め」
「生憎それが仕事なんですよ」
ビスカスは溜め息を吐きました。

