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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題

怒りで燃える様な瞳で目の前に立っているこの主は、学校を出たばかりで、大人の社交の世界に加わるには少しばかり年が足りません。
つまり、まだ結婚のお相手も見合いのお相手も恋のお相手も、探しては居ないのです。それなのに既に、人の口に戸は立てられないと言う通り、近隣にその美しさの噂は轟いておりました。
(こんなに聡明でらっしゃんだから、誰の手も付いて無え今のうちにモノにしちまえって思う奴が居てもおかしくねぇって分かんねーかな……分かんねぇんだろうな。気高すぎんだよな、ウチのお嬢様あ)
自分の価値を分かっている様で分かって居ない所や、大人ぶっていても娘娘していて初なところは、ローゼルの高貴さの表れであり良い所であり堪らなく愛らしい所なのですが、それを指摘してもますます臍を曲げるだけでしょう。
「……仕方有りませんね。呉々も、お気をつけて」
ビスカスは、諦めました。
*
(女ってな話が長ぇってなあ分かっちゃ居るが、いつまで続くもんなんでしょうねー)
ビスカスは、ローゼルから帰り時間を聞き出す事も、迎えに来る事の承諾を貰う事も、諦めました。
その代わり、教室の終わるおおよその時間を先生宅の使用人にこそっと尋ね、お宅の玄関が見えるけれど怪しまれない場所を探して、ローゼルの承諾無しで待ち伏せする事に致しました。
(そろそろ終わっても良い頃合いなんじゃねーのかねー?)
誰も出て来ねぇなとビスカスが思った時、見憶えのある女が出て来ました。
「あら?」
「先程は、ありがとうございました」
ビスカスはにこっと人好きのする笑みを浮かべました。
その女は、先程予定を教えてくれた使用人でした。突然見知らぬ人間に教室の予定を尋ねられたというのに、「普通は教えないのよ?でもあんたどこをどう見ても悪人って感じじゃないもんね」と、笑いながら教えてくれたのです。ビスカスにはそういう、人の懐に入り込んで気を緩ませる様な所が有りました。
「教室、さっき終わったわよ?」
「え」
「皆様、出て来なかった?……ちょっと待ってて」
女は一旦中に引っ込んで、また顔を出しました。
「今日はお庭からお帰りになったんですって!その方が寄りたい所に近いからって!」
「ありがとう、助かった!」
誰かに聞いてくれたらしい親切な女に礼を言い、ビスカスは駆け出しました。

