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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題

(奥様、感謝します!)
……と思ったのはビスカスだけで、単に偶然なのでしょう。老婦人が店に買い物に来たらしく、丁度ビスカスの目の前で扉を開けようとしたのです。
「こんにちは、奥様。扉は重う御座いましょう。宜しかったら、お開け致しましょうか?」
ビスカスは親切半分助かった気持ち半分で、老婦人に声を掛けました。
「あら、こんにちは。開けて下さるの?助かるわ、ありがとう」
老婦人は微笑んで、扉の前をビスカスに譲りました。
ビスカスは老婦人に軽くお辞儀をして、飾り金具の施された由緒有り気な重い木の扉を開けました。
「奥様、どうぞ」
「ありがとう、ご親切な方」
老婦人はにっこり笑うと、店の中に足を踏み入れました。ビスカスは老婦人の為に扉を押さえている振りをしながら、店のなかを隅から隅まで見回しました。
(居た!……けど、居ねえ!!)
先程見かけたご令嬢はすぐに見つかりました。が、ローゼルは居りません。
ビスカスは思い切って老婦人に続いて店に入り、ご令嬢方に近付きました。
「……あら?貴方、ローゼル様の」
女だらけの女の為だけに有る様な店に男が一人というのに違和感を覚えたのか、顔見知りのご令嬢の一人がビスカスに気付いて声を掛けていらっしゃいました。
「こんにちは、お嬢様方。ローゼル様はご一緒されては居ないのですか?」
「それが」
ご令嬢方は、表情を曇らせました。
「ここまでは、ご一緒にいらっしゃったのだけど……」
「しばらくしたら、ご気分が優れないから少し風に当たって来るって仰って」
「そうですか……」
店の中には母娘連れの客も居りました。刺繍は奥様の趣味であったので、ローゼルもこの店に奥様と連れ立って訪れた事もありました。それが原因とは限りませんが、ローゼルが居辛いと感じた事は確かです。
「ありがとうございます。大事を取って、ローゼル様をお探ししたら今日は私と一緒に帰って頂くことに致します」
「そうね、その方がご安心ね」
「お大事になさってって、お伝えして下さいね」
「ありがとうございます。申し伝えます」
ビスカスは慌ただしくお嬢様方にお辞儀をして、女性だらけのその店を後に致しました。

