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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題

* * *
(風に当たる、ったってなあ……)
通りに出たビスカスは辺りを見回しました。
この辺りは小間物屋や生地屋や洋服屋が並んでいて、いかにも女の好みそうな店が集まっている、小さな小綺麗な通りです。見回したところローゼルの姿は有りませんが、友達に断って店を出たのにどこか別の店に入るとも考えられません。
本当に風に当たりたかったのならば、少し離れた川沿いの道に行くか、この街区の中央に有る小さな噴水広場に行く位しか有りません。この辺りは家や商店が密集していて、個人宅に属する物以外では、公園や庭園はほとんど整備されて居りませんでした。
ビスカスは、とりあえずここから近い広場に先に行ってみて、そこに居なければ川まで行くことに決めました。
*
「っと……」
広場に着いたビスカスは、辺りを見回しました。この辺りの公園や広場には時期によっては、出店と言えないくらい小さな果物売りが居ることが有ります。そういう連中の一人を、ビスカスは運良く見つけました。
「よぉ、坊主。何売ってんだ?」
「こんにちは、おじさん!さくらんぼだよ!」
「またおじさんかよ。俺ゃあまだ二十歳だぞ」
ビスカスは先日ローゼルにも「おじさん臭い」と言われた事を思い出し、苦笑しました。
「ま、いいや。一杯くれ」
「毎度あり!」
この地は果物の産地なので、少し田舎に行けば果物を買うものなど居りません。季節になればどこの家にも嫌と言うほど獲れた物や貰い物が溢れるからです。ですが、街では違います。農地や果樹園と離れている街では、果物は買って食べる物なのです。
出荷して店で売るには熟れすぎだったり小粒だったりする果物をこのように販売することは、近隣の子どもの小遣い稼ぎとして、容認されておりました。
「はい、どうぞ!」
「ありがとよ、ほら」
「わ、おじさん、お代が多……うわ!!」
さくらんぼ売りの少年はまず代金が多いことに驚き、次にビスカスのさくらんぼの食べ方に驚きました。ビスカスはさくらんぼの軸を全部纏めて持って実を一気に口に入れ、軸を全部むしり取ってもぐもぐ噛んで種を一気に吹き出して、軸とともに種を入れ物に収めて返して来たのです。

