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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題

「すごいね、おじさん……!種を飛ばした人は居るけど、そうやって全部口に入れた人は、初めてだ……!」
「便利だろ、すげー早く食えんぞ。もう一個教えといてやろうな?こん位の年の男は、おじさんなんかじゃねーよ。俺ぁ、お兄さんだ」
「あ、そうだ。おじ……お兄さん、お代が多いよ!お釣りが無いんだけど」
「要らねー。取っとけ。その代わりにちっと教えて欲しいんだが、もんのすげー美人がここらを通んなかったか?」
こんな雑な聞き方じゃ分かる訳無ぇかとビスカスは思ったのですが、美人と聞いた少年は目を輝かせました。
「通った!!!!!!!!」
「え!」
「すごく綺麗なお姉さんでしょ?さくらんぼも買ってくれたよ!」
「え」
(お嬢様が、買い食いだと……!?)
ローゼルは普段、買い食いをするような事は有りません。
小さい頃は街で見かけて欲しそうにする事も有りましたが、領主様から品の良い振る舞いでは無いからと厳しく禁じられていたのです。
「……坊主。その美人は、どんくれーの美人だった?」
ビスカスは少年に聞きました。もしかしたら美人は美人でもそこそこの美人ーーつまり、ローゼルではない別人かと思ったのです。
「どのくらい?……とにかく、生まれてから見た中で、一番の美人だよ……!!周りが光ってて、幻みたいで……まるで、女神様みたいだった……!!」
(……あ。間違いねー。そりゃお嬢様でしか有り得ねーわ)
うっとりと賛辞を繰り出し続ける少年を見ながら、ビスカスは漸く納得しました。
(それにしても、買い食いってなー……一人で出歩く事なんざ無ぇから買い食いする機会も無ぇし、お年頃になられてからはお行儀にうるさくなられて、祭りでもそんな事ぁ……)
そこまで考えたビスカスは、はっとしました。
領主家の子ども達の買い食いには、一つだけ例外が有りました。
それは、果樹園の収穫の祭りの時に売られる、さくらんぼとリンゴの間くらいの大きさの、姫リンゴの飴掛けでした。その如何にも祭りらしい艶々とした真っ赤な可愛らしいリンゴは、毎年奥様が三人の子どもたちとビスカスに買って下さる事になっていました。その時だけは領主様も渋々奥様に折れて何も言わずに、喜ぶ子どもたちをほんの少しだけ嬉しそうな顰めっ面で見ておられました。

