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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題

「で、その麗しい女神様ぁ、その後どこ行った?」
「そっちだよ。お兄さんが来た方」
「はぁ?」

「すごい良い匂いのする羽根みたいに綺麗な手巾を出されてさくらんぼを包んで大事そうに仕舞われて、にっこり笑ってありがとう、ごきげんようって仰って、しばらく噴水を見てらしたけど……お帰りになるつもりだったんじゃないの?いらっしゃった方に引き返されてたよ」
「そうか……」

 ローゼルは友達に席を外すと言っただけで、帰るとは言って居ないのです。戻ろうとするのは当然かもしれません。しかし、その友達の所から来たビスカスは、途中でローゼルに会ってはおりません。

(どこですれ違ったんだよ)

「……そうだ。あの出口のとこで」
「何だ?」
「身なりの良いおじさんに、話し掛けられてたよ」
「え」

「そのおじさんは、本っ当におじさんだよ、お兄さんじゃないよ。……俺の父ちゃんと、お兄さんの間くらいかな」
「なんでそんな知らねぇ奴と」
「知ってたみたいだったけど」
「何だって」
「女神様もお辞儀なさって、何か話してたよ」

(どこのどいつだよ……!)

「その男の特徴は何か無いか?背が高いとか低いとかハゲとかデブとか髪の色とか」

 少年は、腕を組んで考え込みました。

「うーん……あ、そうだ。ステッキを持ってたよ」
「ステッキ?」
「うん。犬の頭が先に付いてるステッキ」

(……あいつか!)

 それは、領主様と仕事上の付き合いの有る男の持ち物でした。その男は、ローゼルが十六になったら嫁に欲しいと領主様についこの間言って来たのです。

 ローゼルは小さい頃から人を惹き付けずには居られない美人でした。
 それは家族にとっては喜ばしい事でもありましたが、悩ましい事でも有りました。
 年頃になれば誰かと娶せなくてはいけませんので、人目を避ける事は出来ないでしょう。しかし、それまでは下手に人目に触れさせて、良からぬ事を望む輩に手を出されては困ります。
 実際にその様な事はまだ学校にも上がらぬ年端も行かぬ頃から何度も有り、領主様はローゼルが学齢に成る際に学校にはやらずに家庭教師を付けて、家の中だけで育てようかと考えた程でした。奥様が反対された為、結果的には送迎付きで学校に通いましたが、それでも家での宴等にも参加せず、外出時には誰かが必ず一緒に出掛け、箱入り娘を地で行く暮らしをして来たのです。
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