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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題
*
「こんにちは。御免下さい」
「……はい?」
男の家を探し当てたビスカスは、石の階段を数段上った所にある、獅子の飾りの叩き金の付いた扉の前に立っていました。それを何度か叩いて声を掛けた後、使用人によってその家の扉は開かれました。
「突然失礼致します。こちらに今、年若い女性のお客様がいらしてませんでしょうか?」
「……どちら様ですか?」
使用人はビスカスの言葉に答えずに、不審そうに顔を顰めました。
未知の人間の訪問です。警戒されて当然でしょう。突然閉め出されない様に、ビスカスは玄関扉が開いた瞬間に、隙間にさり気なく足を突っ込んで居りました。
「俺ぁ、お嬢様の御付ですよ。いらしてんでしょ?ちょいと、お邪魔しやすねー」
「ちょ」
使用人は顔色を変えて扉を閉めようとしましたが、ビスカスはその前に突っ込んでいた足を滑らせて、玄関の中に踏み込みました。それから隙間に体を捻じ込んで、言葉の通り、難なくお宅にお邪魔しました。
「ちょっと、お待ちを!」
ビスカスは使用人を無視して、騒ぎ立てずに片っ端から扉を開けて行きました。
男とローゼルが一緒に室内に居るとしても、どういう状況か分かりません。ローゼルの名を呼べば反応が返って来るかもしれまんが、男に気付かれる事でローゼルの身を危険にさらす可能性も有ります。
ビスカスは追い縋る使用人を尻目に、ひたすら扉を開け続けました。
「待って下さい、ご令嬢など」
(居るだろ。何処だ)
「人を呼びますよ!」
(ああ、ぜひ呼んで欲しいもんだ)
「主がお怒りに」
(俺の主を泣かせる方が何倍も怖ぇんだよ)
「……ここか?」
幾つ目かの扉の前で、ビスカスは呟きました。
鍵が掛かっている扉の奥には、人の気配がします。
「……」
何も答えず無言のまま、青ざめた顔でどこかに走り去る使用人を見て、ビスカスは懐から鍵を開けるための道具を取り出しました。
『お前がどんなに不器用だろうが関係無え。出来ねぇ間は郷にゃ帰さねぇぞ』
ビスカスは、師匠の言葉を思い出して、一旦深呼吸しました。
『飛び道具が使えねぇのは仕方無ぇ、体で何とかしろ。だが、こいつは替えが効かねえ。お前の主が扉の向こうで酷ぇ目に遭ってんのをみすみす放って置きたく無ぇなら、やれ』
それから、ゆっくりと、道具を鍵穴に差し込みました。