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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題
「もう大丈夫ですよ……ゆっくり息吐いて……そうです……っ?!」
ビスカスが右肩に衝撃を感じて振り向くと、そこには先程玄関を開けた使用人が、火かき棒の様な物を握り締めて、震えながら立っていました。
使用人は、侵入者に対抗する何かを取りに行っていたのでしょう。ビスカスの右肩は服が破けて皮膚が裂け、出血しておりました。痛みも有りましたが、衝撃と憤りで麻痺しているのか、痛いよりもむしろそちらがローゼルを抱いていた側では無くて良かったと、ビスカスは思いました。
(頭を狙って逸れたんだったら幸運って奴だったな……だがもしお嬢様を掠めでもしてた日にゃあ、)
「ひっ……!」
ビスカスはローゼルの背中をゆっくり優しく叩きながら、震えている使用人を睨み付けました。使用人は手に持った棒をやかましい音をさせて取り落とし、へなへなと床に座り込みました。
「……お前……いくら主とは言え、まだ成人もしてねぇ女の子をこんな目に遭わせやがった奴を、庇うのか……?」
先程から床に倒れ伏しているこの家の主は、この騒ぎでもぴくりとも動きません。気を失っている様です。
「庇ってなんて!」
「庇ってんだろ。俺ぁお嬢様をこんな目に遭わせた奴ぁ許さねえ。旦那様だってお兄様方だっておんなじだ。そいつを庇うなら、お前も同罪だ」
「違います!勘違いなんです!賊が押し入ったのかと!」
ビスカスは舌打ちしました。確かにやった事は賊と変わりません。もっとも、この使用人がさっさとローゼルが中に居る事を認めて案内してさえ居れば、押し入らなくても済んだのですが。
「お嬢様と俺が帰る算段して来い。そしたらお前の事は見逃してやる。……お前の旦那様ぁ無理だろうがな」
「……畏まりましたっ……!」
ビスカスは、ばたばたと使用人が走り去るのを見て、ローゼルを見て、倒れている男を見ました。
ローゼルは最初よりは呼吸が落ち着いて来ているものの、服を握る手にも顔にも血の気がなく、未だに冷たく強張っています。男をこのまま残して行くのは業腹ですが、苦しんでいるローゼルから手を離してまで男に制裁を加えてやる義理など有りません。
「帰りましょうね。お友達にもちゃんとお断りして来やしたから、ご心配なさる事ぁなんにもねぇですよ」
もう一刻も、ここに居たくは有りません。
ビスカスはローゼルを抱いて、立ち上がりました。