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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題

(あああ……俺ぁ、どうしたら良いんで……!!)

「お前、馬鹿じゃないの?」

 どうして良いか分からずに悶えていると、ローゼルがスープを混ぜながらぽつりと言いました。

「へ?」

(まさか、俺の心の声が漏れっ?!)

 ビスカスは青くなりましたが、骨を取り除こうとでもするかの様にスープを見詰めて執拗に混ぜていたローゼルは、全く気付きませんでした。

「馬鹿じゃないの、怪我なんかして」
「は?……ああ、怪我」

 心の声が漏れていたのではなかった事に、ビスカスはほっとしました。

「ご心配お掛けして、申し訳ありやせん。でも、俺ぁお嬢様の護衛ですから、怪我も仕事のうちみてーなもんなんじゃねーかなーって……え。」

 いつの間にかビスカスの目の前には、スープの入った匙が差し出されておりました。

「心配なんか、してやしないわよ。とりあえず、お食べ。」
「いや!いやいや!」
「四の五の言わずにお上がりなさいな、この為にわざわざ来たんだから。嫌いじゃ無かったわよね?カリフラワー。」
「好きです!大好きでさあ!!でも、自分で!自分で食べれますって!!」
「……」

 断るビスカスに冷たい視線を向けたローゼルは、無言で匙を渡しました。
 ビスカスは右手で匙を受け取り、顔を顰めて左に持ち直しました。そして、スープを掬ったのですが。

「……あれ?」

 傾く匙からスープはどんどん零れ落ち、口元に届く頃には空になっておりました。

「あれ?あれれ?」

 ビスカスは、魔法の様に掬っても掬っても空になり続ける匙を、解せない顔で見詰めました。

「お返し。」

 ローゼルはビスカスから勝手に匙を取り上げました。そしてスープをしっかり掬うと、ビスカスの口元に運びました。

「ほら、ご覧なさい。だから言ったじゃないの」
「……すいやせん……」

 親鳥に給餌される雛の様に、ビスカスは口を開けました。こんな有り様では、帰るも帰らないも有りません。食べ終えるまでは、ローゼルはここに居座るでしょう。
 ビスカスは諦めて、大人しくされるがままに食事を摂りました。ローゼルの手付きは慎重で優しく、表情は真剣で、供されるスープは多少冷めていたものの、今迄食べた事が無い位滋味に溢れておりました。
 ビスカスの腹の底から、むずむずとこそばゆい様な、思い切り走り回りたい様な、不思議な気持ちが湧きました。
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