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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題
「そいつを聞いたら俺だけじゃ無く、奥様も、大層お喜びになると思いやすよ」
ビスカスは、さくらんぼを三つ纏めて摘みました。
「奥様ぁ、薔薇も勿論お好きですけど、何処においででも、いつ何時でも、リュリュの事を何より大事な宝物みてぇに思ってらっしゃるじゃねーですか。いつだってお気に掛けて、もんのすげぇ慈しんでらっしゃいますからねえ」
ビスカスはローゼルから視線を外して、さくらんぼを三つ一度に口に入れました。
「リュリュが嬉しかったり、楽しかったり、美味しかったりしてニコニコしてらしたら、奥様ぁそれだけで、すんげー嬉しいと思いますよ」
「…………」
さくらんぼを食べ終えたビスカスは、今度はさくらんぼを一つだけ摘みました。
「……召し上がりますか?」
「……ん」
ローゼルはこくりと頷いて、幼い時奥様にせがんだ様に、口を開けました。そこにビスカスがさくらんぼを入れてやると、もぐもぐとゆっくり口を動かしました。
「…………美味しい。」
「でしょ?どうぞ、たんと召し上がれ」
ローゼルは小さく頷くと、俯いたままぽたぽた涙を落としながら、さくらんぼを一つずつ食べ始めました。
「美味しい、ビスカス」
「へえ。美味しいですねえ、お嬢様」
それは、元々美味しいさくらんぼでしたが、ローゼルが食べているのを見ながら一緒に食べて居ると、ビスカスにもさくらんぼが何倍も美味しく感じられました。
(……やっと、捕まえやした。もう大丈夫ですよ、奥様)
ビスカスは涙を押し止め、何食わぬ顔を装ってぽつぽつ話すローゼルに相槌を打ちながら、心の中で奥様に呼び掛けました。
(さすがお嬢様だ。閉じ籠もってた所から、ちゃあんとご自分で出てらっしゃいやしたよ)
二人は山盛りのさくらんぼが空になるまで、ゆっくり静かに、食べ続けました。