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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題
   *

「……ん?」

 目を開けたビスカスは、自分がベッドの上で座っているのではなく横になっていて、寝間着を着ておらず裸な事を訝りました。
 けれど、愛おしい妻の温もりが自分にぴったりくっついてすうすう寝息を立てているのに気が付くと、今のは夢か、と納得しました。

(……えれぇ本当みてーな夢だったね……)

 ローゼルと結ばれて、傷の話をしたり昔の愛称を呼んだりする様になったからでしょうか。先程まで見ていた夢は、どちらが現実か分からなくなりそうな位鮮明でした。

「……ビスカス?」

 目覚めの身動ぎが伝わったものか、ローゼルがもぞもぞ動いて、眠たげにビスカスの名を呼びました。

「起こしちまいました?すいやせん、まだ朝じゃねぇです。もうちっと、寝やしょうね」
「ん……お前も、寝る?」

 昔と同じ様に背中を叩くと甘えて来るローゼルの声は、昔とは違う艶を含んでおりました。擦り寄せてくる体は、さらけ出された素肌を全て委ねてくる様に甘く柔らかで、ビスカスはこっちが夢でもおかしくねぇなと思う程に陶然となりました。

「ええ……ちっと、夢見てやした」
「夢?何の夢?」

 髪を撫でられてうっとり微笑むローゼルに、ビスカスも微笑みました。
 
「お嬢様のーーリュリュの夢ですよ。十五の頃、俺が怪我した時の夢です」
「……この傷の時?」
「う」

 指先で傷跡をつっと撫でられて、ビスカスの背中はぞくぞくしました。それに気付いたローゼルは、くすくす笑って脚を絡めて抱き付いて来ました。

「ふふ……」
「こら。おいたが過ぎますよ……寝れなくなっちまうじゃねーですか」

 ぼやきながらちゅっと口づけると、逆に口づけ返されて、お互いの熱を上げ合った二人は、すっかり目が冴えてしまいました。

「……お母様、何て仰るかしら……私達の、結婚のこと」

 奥様の事を思い出したのか、ローゼルが穏やかに呟きました。

「反対は、されねーと思いますよ。お嬢様の決めなすった事ぁ、いつだって尊重しなさる御方ですし……それに」
「それに?」
「……や、何でも」

『こんなお願いをするのは、迷惑だとは思うけど……リュリュの事を頼むわね、ビスカス』

(奥様……安心なすって下せえ。俺ぁ一生お嬢様に全身全霊でお仕え致しやす)

 ほんの少し疼いて痛む様な、甘さに酔わされる様な、複雑な感慨が胸を満たしました。
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