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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第7章 大きさの問題

 ローゼルにとっては、美しいのも魅力的なのも人の心を掴みまくるのも、産まれた時から当たり前の事です。崇拝されるのも当然の事なので、それを止めようとした事も無ければ、断ろうとした事も有りません。
 逆に、注目されないと機嫌が悪くなるなどという事も有りません。他人の評価を特に気にして居ないのは、さすが生粋の美女と言った所でしょう。

 ビスカスも、ローゼルを妻にしたからと言って、独り占めする積もりなどさらさら有りません。ローゼルの美しさを目にする恩恵に与る権利を世の中から奪う等と言う事は、罪であるとすら思っているからです。
 例えてみれば、ローゼルは太陽の様なものです。太陽がたまたま今自分に目を向けてくれているからと言って、自分以外の人間は日の光を浴びるななどと、言えるでしょうか。

 ビスカスの一番の望みは、子どもの頃も御付きになっても護衛になっても夫になっても、ローゼルが自信に満ちて美しく気高く輝いて居る事なのです。本来であれば、崇拝者が増えたところで、地団駄など踏もうとは思わなかったでしょう。

 しかし、ビスカスには、誤算が有りました。
 ローゼルが今迄以上にモテる様な事が起こるとは、夢にも思って居なかったのです。

 ローゼルは、二十代後半に差し掛かって居ます。今の世間の基準で言うと、現在が女としての評価の頂点か、頂点を少し過ぎたかという位の年頃です。
 それに加えて結婚の事を公表すれば、男達からの評価は辛くなるでしょう。夫が知性と美貌と財産を備えた紳士などではなく、その三つの要素のどれも皆目備えていないビスカスで有ると知れたら、老若男女関係無しに、幻滅する者も居るでしょう。
 
(……なのに、なんで、逆に護衛の苦労が増えそうなくれえ、おモテになっちまってんだよ……?!)

 ローゼルしか見ていないビスカスは気付きませんでしたが、店の中には、ローゼルを目で追っていなかった客が、三分の一ほど居りました。ビスカスがもし彼らに聞いてみていたら、その理由が分かったかもしれません。
 その三分の一の客は、ローゼルではなく、ビスカスを見ていたのです。
 正確には、「領主家のお嬢様と御付きの妙に可愛いらしい仲睦まじさ」とか、「見たこともない様な物凄い美人とその美人に極上の笑顔を向けられているぱっとしないのになんだか憎めない愛嬌の有る男」を、眺めて居たのです。
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