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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第7章 大きさの問題
客達の視線は、一様に柔らかな物でした。二人を眺めていた誰もの中で、大事な人を思う心にぽっと灯りが点る様な、温かい気持ちが呼び起こされていたのです。
(なんだか、微笑ましいわねえ)
(久々に気持ちの和むもん見たな)
客達は、これから会う家族や友達や恋人への良い話の種が出来たと、にこにこしながら各々店を後にしました。
ちりん、と入口の扉に付いている鈴が鳴り、出て行った客と入れ替わりに、賑やかな客の一団が入って来ようとしておりました。
「……あら、ビスカスさん?」
「……へ?」
先頭で入って来た客に声を掛けられ、ビスカスはそちらを向きました。
「……あ!」
声を掛けて来たのは、肉感的な肢体を柔らかなドレスと外套に包んだ、ビスカスよりも少し年嵩に見える女でした。
「こんにちは。贈り物探し?」
「こんにちは……っや、あの、」
「あ。お邪魔ね?またね」
何かを察したのか、女は軽く片目をつぶって目配せすると、知らん振りで仲間と共に回れ右して店から去って行きました。
(っ驚いたっ……こっんなとこで会うたあ……)
それは、なんと、ビスカスがローゼルの婚約式の日に泊まろうとして居た店の女主人でした。胸の豊かな女の子を何人か連れていたので、店の子達と買い物にでも来たのでしょうか。
(しかし、さすが、サクナ様ご推薦の店の女将だぁねー……空気の読み方ぁ、客商売の鑑だな……)
女主人は恐らくビスカスの態度で、誰か連れが居る事を見抜いたのでしょう。ビスカスは結局泊まらずに違約金を払っただけなので、正式には客では有りません。それでも顔を合わせて事情を察した途端に、同じ店で買い物をするのを後回しにしたのです。これだけ徹底して客に気を配る店ならば、常連になろうという客が多くても、不思議では有りません。
ビスカスが女主人の機転に感心していると、背後にかさりと物音がしました。
「……今の、誰よ……」
(っひぃいっ?!)
ビスカスは、すんでのところで声を出すのを押し止め、そーーーーっと振り向きました。
「おっ帰りなせえ、ローゼル」
「今のひと、誰」
「今の人って」
「今、女の人と話してたわよね」
「や、話してた?って言うか?たまたま?話し掛けられた?みたいな?」
ビスカスが何故か疑問形ばかりで答えると、ローゼルは疑わしそうに目を細めました。