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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第7章 大きさの問題
「……あの人、お前の名前、呼んでなかったかしら……?」
(あわわわわわわわわわ!どっから見てらしたんですかい……!!)
ローゼルのご機嫌が急速に傾いて行くのを目の当たりにして、ビスカスは慌てました。
「や、その、ちょっとした?知り合い?みたいな?」
「知り合い……」
「そのー……あのですね。お嬢様の婚約式の日に、俺ぁ、出て行こうとしてたじゃねーですか」
「……ん……」
不満そうな声が、怒りだけでなく湿り気も含んで来た様な気がして、ビスカスは内心おろおろしながらローゼルの手を引いて、一緒に店の外に出ました。
「……出てったら、その日から、家無しになりますでしょ?そん時に自棄酒飲みに行こうとしてた店の、女主人なんでさあ」
飲んで泊まって慰めて貰うというのが一通りの計画であったのですが、最初の部分だけに代表して主張されて貰うことに致しました。
「自棄酒……」
「へ?」
「お前、自棄酒なんて、飲めるの……?」
ビスカスは下戸の中の下戸、甚だ下戸です。以前ローゼルが飲み残した酒を片付けた翌日に、寝込むほど酷い二日酔いになった程の下戸です。
「や!結局飲まなかったんで、自棄酒が飲めたかどうかは、分かりやせんよ?分かりやせんけど……飲みてー気分だったんですよ!!」
「……飲みたい気分……」
「そりゃ仕方ねーでしょ?家も無くして仕事も無くして……一番大事な物まで、無くす所だったんですから」
「一番、大事?」
(っああああなんでこんなに察しが悪ぃんだよ、このお利口さんで完っ璧にお美しい頭ぁよ!!)
この気まずい状況や、それをなんとかしようとした為に自分が口にしてしまった言葉や、本気できょとんとしているローゼルの愛らしさに、ビスカスは二重にも三重にも悶えました。
「あのですねえ!一番大事なもんってなぁ、」
「あ!」
「へ?……っわ!」
ローゼルが目を見開いて声を挙げたので、ビスカスもつられてそちらに振り向きました。そこに見えるのは、先程出て来た店の入り口です。
そしてその入り口に、頃合いを見て戻って来たらしい店の女主人と連れの女の子達の一団が、楽しそうに笑いながら入って行くのが見えました。