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セイドレイ【完結】
第12章 価値
(あらがき…ちか…、千佳ちゃんて、あの…──)
同級生とはほぼ交流を持たない亜美ではあるが、それは聞き覚えのある名前だった。
荒垣 千佳(あらがき ちか)。
亜美とは違うクラスだが、同じ光明学園に通う生徒だ。
たしかあれはまだ転校間もないころ、クラスメイトが話しかけてきた中に居た生徒だった…はず。
亜美は今こそ帰宅部であるが、お互い中学からテニスをやっていたということで少し会話をした記憶があった。
「知らない方がよかったかい?」
亜美は相当に困惑する。
ただでさえ先日、本山とあんなことがあったばかりなのに──そこへもって、まさか同級生の父親が "客" になろうとは。
これ以上、学校での面倒事を増やしたくないと思っていたその矢先であるのに──。
「…どうしてこんな人が…私を?」
「まずは身近なところで、と思ってねぇ。なんて、それは冗談だがね。数いる私の知り合いの中で、たまたま彼が君に興味を示してくれたというだけさ。まぁ、彼も人間だから少しは躊躇もしていたが。なんせ、自分の娘と同い年、しかも同じ高校に通う少女を金で買うんだからねぇ」
新堂は煙草をふかすと、さらに続けた。
「それにね、荒垣はそもそも私に借りがあるんだよ。娘の千佳は我が校に裏口入学したんだ。もちろん私のはからいでね。どうしてもうちの学園でテニスがしたかったらしくてねぇ」
「裏口…入学…?」
「うむ。本来、千佳の学力と部活動の成績だとうちは厳しかったんだが。…まぁそんな背景があって、今回は会員になってもらう代わりに、千佳の大学までと、いずれ高校生になる息子のこともうちの学園で面倒を見る、ってことで手を打ったんだよ」
「そ、そんなことまで…?」
「要するに、会員になるために "それくらいの金" を払ってるってことさ。君には想像もつかないかもしれないがね」
あらためて、亜美は自分がとんでもないことに巻き込まれたのだと思い知る。
「荒垣にとっちゃあ、娘と息子の将来はこれで安泰。しかも君を抱けるんだよ?これでも安いくらいだと私は思うがね。ククッ…」
亜美は想像してみた。
もし自分の父親が、同級生を金で買っていたとしたら。
しかも、自分の高校や大学進学のために──。
「荒垣と私は、昔はよく東南アジアに少女を買いに行った仲なんだよ。だからまぁ、もとからそういうスケベな奴なんだがな」