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セイドレイ【完結】
第13章 独りぼっち
その後、亜美は始業ギリギリで席につく。
いつもなら誰よりも早く教室に入り予習をしていたのに、本山の相手をしていたため遅くなってしまった。
こうした日常生活における小さな変化も、亜美にとっては大きなストレスとなる。
クラスメイトたちはみな、夏休みの思い出話に花を咲かせているようだった。
「…亜美ちゃん!おはよー!あれ?今日はいつもより遅くない?てか、いつもが早いだけか。めずらしいね~」
「あ、うん…。ちょっと今日は寝坊しちゃって」
「うそー??亜美ちゃんでも寝坊することあんの?意外~。あたしは毎日寝坊してるけどさ!あはは」
「はは…。でも……に、二学期からこの時間に登校しようと思ってるんだ。だからこれからは毎日、このくらいかな…?」
咄嗟についた嘘。
亜美はその重みを瞬時に噛みしめる。
ひとつ嘘をつけば、それを隠すための嘘を重ねなければならない。
本山の存在によって学校での生活にほころびができた今、亜美は隠さなければならないことが増えてしまった。
そこへもって荒垣千佳のこともあるため、これまで以上に細心の注意を払いながら学校生活を送ることとなる。
そんな緊張の中、亜美の新学期は幕を開けた。
始業式のあとは、夏休みの課題テストがあった。
しかし亜美はどこか気が散っており、なかなかテストに集中することができない。
特に本山がテストの試験官として現れたときは、その舐め回すような視線に耐えるので精一杯だった。
これからは学校でも、こんな落ちつかない毎日を過ごすのだ。
(──だめ。しっかりしなきゃ)
そして放課後──。
亜美は本山に言われた通り備品倉庫へと向かうと、周囲に誰もいないことを確認して、倉庫のドアをそっと開ける。
埃っぽく空気の悪い倉庫内。
本山は乱雑に置かれた備品の上に腰かけていた。
「お?…来たか。お前もそこらへん、適当に座れ」
「い、いえ…。立ったままでいいです」
「フン。まぁいい。…で、さっそく今朝の件なんだが──お前、スマホが欲しいって言ってたよな。理由はなんだ?」
「そ、それは…その…────」
「なにを考えているか知らんが、ヘタなマネはやめておけ。先生も正直、ビクビクしてんだよ。なんせ、あの新堂理事長が絡んでるんだからな」
「────……はい」