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セイドレイ【完結】
第13章 独りぼっち
それは、亜美が生まれて初めて人を脅した瞬間だった。
これまでただ理不尽に奪われるだけだった少女が、奪うことを覚えたのだ。
考えてもみれば、立場が弱いのはむしろ本山の方である。
動画をネタに脅迫したつもりでいたが、亜美を取り巻く状況はもはやそんなレベルではなかった。
権力者たちを対象とした闇の売春ビジネス──亜美はそんなトチ狂った世界の中心で生きている。
その支配人である新堂にとって、亜美の存在は搾取対象であるのと同時に、なによりも守るべき存在でもある──そう、己の保身のために。
新堂の手にかかれば、本山の教師人生などあっさり終わってしまうだろう。
生徒指導主事を経ていずれは教務主任となり、ゆくゆくは──と思い描いていた出世コースはおろか、なにもかもを失うかもしれない。
やはりとんでもないことに首を突っ込んでしまった──本山は後悔を滲ませ、自身の下半身を恨んだ。
「──ったく、教師を脅すなんてな。お前も大したタマだよ。仕方ねぇ…分かったよ。だが、金は要らん」
「え…?」
「あいにく、教え子から金を巻き上げるほど困っちゃいないんでな。スマホ代くらいどうとでもなる。その代わり…きっちりカラダで払ってもらうからな?」
「は、はい…。でもほんとに…いいんですか?」
「ああ。今日早速、契約してくる。明日には渡せるだろう。だが絶対にスマホを持っていることをバレないようにしろ。大体お前、バレたときはどういいわけするつもりなんだ?」
「そ、それは…──」
「けっ。まぁ、バレたときは俺もお前も終わりだ。そういうことだろ?だから絶対にバレるな。いいな?」
「は、はい…!ぜったいに、バレないように…しますっ…」
「よし。そんでこれからは毎日、先生に奉仕しろ。朝と帰りだ。先生の気分で昼休みに呼び出すかもしれん。それでもいいか?できるか?」
「はい…分かり…ました」
「ん。じゃあこれで交渉成立、だな。じゃあ今日はもう帰っていいぞ」
「えっ…?あ、あの…しなくても…いいんですか?」
「今日はそんな気分もすっ飛んじまったよ…なーんてな。ハメたいのは山々なんだが、今日はこれから部活に顔を出さなきゃならん。だから続きはとりあえず明日だな。気をつけて帰れよ────」