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セイドレイ【完結】
第13章 独りぼっち
「──つーわけで、何度もいうが…とにかく、絶対に見つかるなよ。分かったな?」
「はい。あの、先生……」
「なんだ?まだなんかあるのか?」
「いえ……。あの、本当にこれ…スマホのこと、ありがとうございました。大事にします」
「お…?そう、か…──」
本山は不思議な感触を覚えていた。
たった今犯されたというのに──亜美は、本山から与えられたスマホをそれはそれは大事そうに胸に抱きかかえ、礼を言ってくるのだ。
この亜美の "いじらしさ" こそが、ひょっとしたら男たちを狂わせていく原因なのかもしれない──と本山は思う。
「──では私、今日はこれで失礼します」
そう言って、亜美はなにもなかったかのように倉庫を出ていく。
その後ろ姿を眺めていると、やはりスマホを与えたのは間違いだったかもしれない──と後悔しつつも、亜美がこれからどんな運命に翻弄されていくのかそれを見届けてみたい気持ちにもなっていた。
射精後にやってくるこの賢者タイムをどうやり過ごすかも、本山にとっては悩みの種であろう。
「(まぁ、高みの見物というわけにはいかんだろうがな。こんなことが理事長にバレた日にゃあ、俺もタダでは済まんだろう──)」
一方の亜美はいつもの道を下校しながら、スマホがバレないようにするための対策を考えていた。
屋敷の中に持ち込むのは危険なため、どこかに隠し場所を確保しなければならない。
現在の亜美が移動できる範囲は、約1キロにおよぶこの通学路だけ。
その限られた中で、人目につかず、雨にも濡れない、そんな場所を探して回るのだったが──いざ辺りを見渡してみると、それは想像以上に困難であることを思い知る。
舗装された道路、区画整理された住宅地──どこも開けた場所ばかりで、物を隠すのに最適なスポットなどなかった。
では、学校に置いておくことも考えてみたものの、使用できる時間が制限されてしまうし、見つかった場合のリスクも大きい。
(どうしよう…。せっかく手に入れたのに──)
そう頭を抱える亜美の視界の前方に、ひとりの老婆の姿が飛び込んでくる。
その老婆はどうやらつまずいて転びでもしたのか、道端で杖を片手に立ち上がろうとしているが、うまくいかないようだった。
亜美はあわてて駆け寄ると、その老婆に声をかける。
「──おばあさんっ!大丈夫ですかっ?!」